日野自動車によるエンジン試験の不正は小型トラックにも対象が広がり、国内向けの全車種が出荷停止になった。50%強出資する親会社、トヨタ自動車の豊田章男社長は日野自に自己改革を迫る異例のコメントを発表した。子会社化から約20年、日野自の自主経営を尊重してきた「適温関係」は子の裏切りによって揺らいでいる。

日野自のロゴマーク。エンジン不正が拡大の一途をたどり、国内向けの全車種が出荷停止に追い込まれた(写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ)
日野自のロゴマーク。エンジン不正が拡大の一途をたどり、国内向けの全車種が出荷停止に追い込まれた(写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 拡大する不正に、親会社のトップとして痛恨の思いがあったのだろう。トヨタ自動車の豊田章男社長はコメントを発表した。「日野自動車が新たな不正発覚により、ステークホルダー(編集部注:利害関係者)の皆様の期待や信頼を再度、大きく損なう事態に至ったことは、同社の親会社としても、株主としても、極めて残念に思います」

 日野自の小木曽聡社長が、これまでの不正に絡んだ会見で豊田氏のコメントを紹介することはあったが、トヨタがプレスリリースでコメントを出したのは初めてだ。8月24日には、トヨタ自身の他、いすゞ自動車、スズキなどの共同出資で商用車の技術開発を目指す枠組みから日野自を除名した。

 トヨタによる日野自への出資比率は50.14%(2022年3月末時点)。豊田氏のコメントには「ステークホルダー」という言葉が3回も出てくる。豊田氏の「親会社としても、株主としても」という言葉にあるように、親会社としてだけでなく、株主としての立場も踏まえたコメントだ。

 親会社として不正を起こさせないコーポレートガバナンス(企業統治)体制を構築できなかったことだけでなく、この問題がトヨタ自身の経営にもマイナスの影響を及ぼすであろうことへの無念の思いがコメントににじむ。

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