前回は「会社と闘おうとしたのに、組合執行部に見放された」と主張する組合員たちの叫びに耳を傾けた。今回は組合執行部が闘おうとしたのに、組合員が大挙して逃げ出したという、真逆のケースだ。闘ってもダメ、闘わなくてもダメ。行き詰まる日本の労働運動に未来はあるのか。

 辻村哲三氏(仮名)は30代のJR東日本社員だ。10年前の入社時にJR東労組に加入したのは、単にほぼ全員が加入していたからだ。「1人だけ入らずに目立ちたくなかった」と言う。 3年前に脱退したのも、周りの皆が抜けたから。「組合費が浮いてよかった」

JR東日本では社員の組合離れが激しい。写真はイメージ(写真:PIXTA)

 組合に一切の興味がない辻村氏のような社員にとり、ストライキなど理解不能な世界である。「労組のしていることは、まともとは思えなかった」と辛辣だ。

 JR東労組の執行部は2018年の春闘で会社側にストを辞さないと通告した。このことを辻村氏は「まともではない」と感じたと話す。辻村氏だけではなかった。大半の組合員が嫌気し、脱退者が続出。組織率が8割を超え、4万7000人を誇ったJR東労組の組合員数は、現在5500人まで激減している。

 JR東労組は合理化策に反対することも多く、会社側にとっては目の上のたんこぶであった。いつか組合との関係にケリをつけねばならないと考えていたところに、執行部がストを辞さない構えを見せた。この機会を逃さず、会社側は一気呵成(かせい)に組合を切り崩した(「官邸、五輪控え『JR革マル』排斥」で詳報)。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1721文字 / 全文2354文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「ガバナンスの今・未来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。