家庭用収納ケース「Fits」で知られるプラスチック製造の天馬(東証1部)が6月29日に計画している株主総会に、4つの取締役選任案が提出されている。社長ら執行部が率いる取締役会と、社外取締役らで構成する監査等委員会、物言う株主(アクティビスト)、創業家株主という4者の思惑が交錯している。

4者の意図が入り乱れ、異例の展開となっている

 ここ最近の株主総会では、物言う株主が独自の取締役案を提出するケースは珍しくない。今回は取締役会と監査等委員会が対立し、取締役会が物言う株主に賛成するという異例の展開となっている。

 一体、天馬で何が起きているのか。2015年の会社法改正で導入された「監査等委員会設置会社」のあり方についても、課題を投げかけている。

 天馬が6月4日に公開した株主総会の招集通知。89ページにも及ぶ中身は、取締役会と監査等委員会の意見が真っ向から対立していることを示している。

 一つ目の案は、取締役会が提案する7人の取締役(監査等委員を除く)の選任案だ。任期満了を迎える廣野裕彦社長らの再任などを含む。これに対し、監査等委員会は7人のうち廣野社長ら4人が「取締役として不適切」と記載した。

 その理由は2019年8月のベトナム子会社での贈賄疑惑にある。税務局員に追徴金を見逃す代わりに金銭を要求され、支払った事件だ。20年の株主総会では、現在の監査等委員が、問題が起こった当時に取締役だった創業家出身の金田宏氏らの再任案に対し、「取締役として不適切」と断じた。議決権行使助言会社の反対もあり、金田氏はあえなく落選した。

 しかし「No」を突き付けられた当日、廣野社長らが取締役会を開いて金田氏を常務執行役員に登用。また天馬がベトナム贈賄疑惑を巡って金田氏らに損害賠償請求訴訟を起こした後も起用し続けたとして、監査等委員は社長らの法令順守が十分でないと批判している(関連記事:委任状争奪戦の天馬、総会でクビの取締役が異例の即日「復帰」)。

監査等委員会の「意見陳述権」

 監査等委員が取締役の人事案について「不適切」と言い切ること自体も大変珍しい。監査等委員とよく比べられる監査役との最大の違いは、取締役人事への影響力を持つ点だ。

 監査役は取締役の職務執行が適法かどうかを監査する。それに対し監査等委員は適法性だけでなく、職務執行が「妥当」かどうかも監査する。監査等委員は取締役を兼任し、監査等委員会の過半は社外取締役が占めるため、独立性を保持しながら会社の意思決定への関与も可能だ。

 監査等委員は取締役の人事案について、株主総会で意見を述べる権利を持っている。社内を知る監査等委員が「不適切」と断じれば、議決権を行使する株主への影響は小さくない。監査役には取締役の人事案について意見を述べる権限はない。

続きを読む 2/4 米ファンドのダルトンにオアシスも加勢

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2175文字 / 全文3796文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「ガバナンスの今・未来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。