企業買収を巡る異例の手法や論点が展開され注目を集めていた東京機械製作所の経営権を巡る争いは、読売新聞東京本社など新聞6社が「ホワイトナイト」を買って出たことで決着した。東京機械の主力事業である新聞向け輪転機は、国内では手掛けるメーカーが2社しかない。今回の出資を主導した、読売新聞グループ本社の山口寿一社長に経緯と背景を聞いた。

山口寿一[やまぐち・としかず]
山口寿一[やまぐち・としかず]
読売新聞グループ本社社長・販売担当、読売新聞東京本社社長、読売巨人軍取締役オーナー。1979年読売新聞社に入社。宇都宮支局や社会部を経て、2002年に読売新聞グループ本社法務部長。読売新聞グループ本社社長室長などを経て、15年に読売新聞東京本社社長。16年に読売新聞グループ本社社長。18年からは読売巨人軍取締役オーナーに。東京都出身。(写真=的野弘路、以下同じ)

新聞有志6社はなぜ、「ホワイトナイト(敵対的買収に対抗して、友好的に買収する企業)」として東京機械製作所の株式を取得すると決めたのでしょうか。

山口寿一・読売新聞グループ本社社長(以下、山口氏):我々の狙いは、東京機械製作所とアジア開発キャピタルの「膠着状態」を解決して、東京機械の経営の安定化を図ること。もう一つは、東京機械の経営を支援し、発展していくようにしていきたいということです。

 国内の新聞輪転機メーカーは、今や東京機械と三菱重工機械システムの2社しかありません。そのうち1社が、敵対的買収を仕掛けられたということで、新聞各社は当初から危機感を共有していました。私がとりまとめ役となり、新聞社や通信社40社が、東京機械の社長宛にレターを提出しました。

東京機械製作所の経営権を巡るこれまでの経緯

【大量の株式の買い付け】
 2021年7月、投資ファンドのアジア開発キャピタルによる東京機械の株式大量取得が表面化し、東京機械は激しく反発。読売新聞東京本社など新聞・通信社40社は9月、「新聞各社の日々の印刷・生産体制に支障が生じ、ニュースの伝達に影響が及ぶ可能性があることに懸念を抱いている」という趣旨の書簡を東京機械に送付した。

【買収防衛策を巡る法廷闘争】
 東京機械は21年10月、買収防衛策の発動を株主に諮るために臨時株主総会を開催。アジア開発を除く一般株主から8割弱の賛同を集めた。アジア開発は裁判所に発動差し止めを求めたが東京機械が勝利。ただ、買収防衛策を発動したとしても、アジア開発の保有比率を一定程度引き下げるのみで、大株主としては存在し続けるという事情があった。

【ホワイトナイトの登場】
 アジア開発は22年1月、東京機械の経営陣の刷新などを求め臨時株主総会を請求すると表明。ただ、水面下では、読売新聞に東京機械株式の買い取りを打診していた。2月下旬、アジア開発が保有する約40%の株式のうち32%を「新聞社有志」が取得すると発表。有志は、読売新聞東京本社(25%)、中日新聞社(2.5%)、朝日新聞社(2%)、北国新聞社(1%)、信濃毎日新聞社(1%)、北海道新聞社(0.5%)の6社。アジア開発は買い増しをせず、株主権を行使しないと約束。売却の結果、特別損失16億円を計上する。

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 買収防衛策を巡る裁判は東京機械が勝利しましたが、問題はまだ続くわけです。アジア開発キャピタルは、東京機械の現経営陣の退任などを目的とした臨時株主総会の招集を請求する用意があると表明しました。ただ、実態としては、膠着状態になっていたと思うんですね。アジア開発側にも(東京機械の経営権を握るような)決め手がなかった。

 そうした折、アジア開発から、「事態収拾を図るために株式を買い取らないか」という提案が持ちかけられ、局面が変わるきっかけとなりました。こちらも驚きました。非公式な折衝で、アジア開発は「譲渡価格は柔軟に応じる」という話だったので、40社の一部に声をかけた、という経緯です。

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