日本企業の後継者選びの方法が変わり始めた。技術革命、新型コロナウイルス禍、資源価格の高騰……。世界経済の大変化の中、必要な後継者像も変わった。後継者選びは、企業の強さを決定づける重要なポイントになってきた。
■ここまでの連載
(1)日本電産・永守氏の教訓 後継選びの鍵は「イズム体得」
(2)日本電産、動き出す「次の次」の後継選び 永守会長が社長育成塾
後継者選びで3度のつまずきを経験した日本電産の永守重信会長CEO(最高経営責任者)は2023年3月、副社長5人を選任し、その中から新社長を決める新しい仕組みをつくり上げた。4年おきにそれを繰り返していくという。だが、そこに至る過程では、環境変化の中で揺れた思いもあったと吐露する。
スカウトして副社長に就けた最初の後継候補が入社後2年で15年9月に退社した際のこと。永守会長は「(外部の人材をスカウトしたが)そういう人たちが経営がうまいとは限らない。錯覚だった」と発言し、「やはりプロパーだ」と言い切った。
プロパー重視に至る経緯は、外部からスカウトした3人目がトップを退任した22年とほぼ同じに見える。そう指摘する筆者に、永守会長は「ちょうどその頃から自動車の電動化の動きが急速に進み始め、やはり自動車に詳しい人を、となった」と答えた。一代で世界一のモーターメーカーを築き上げたカリスマも環境の急激な変化にはついていかざるを得ないということなのだろう。後継者選びに懸けるトップの思いは、状況変化の中で千々に乱れるということか。
若い社長に懸けるトヨタ

「私は古い人間だと思います。商品づくりについては『クルマ屋』の域を出ないんです。未来のクルマはどうあるべきかという新しい時代に入るには、私自身が意識的に引くことが必要だと思ったのです」
1月26日、トヨタ自動車の豊田章男社長が突然、自身の退任を発表して産業界を驚かせた。4月1日付で会長となり、53歳の佐藤恒治執行役員が社長に昇格する。14年ぶりのトップ交代で、創業家以外では最も若い年齢での社長就任となる。
電気自動車(EV)を中心にした電動化の動きが急速に進み、つながるクルマ(Connected)や、自動運転(Autonomous)、所有からシェアリングとサービス(Shared & Services)へという使い方の変化など、100年に1度といわれるCASE革命の中で新たな人材に会社を託すとしたのだ。
豊田社長の言う「クルマ屋」とは、従来の自動車の在り方を中心に考えてしまう古いタイプ、ということなのだろう。トヨタにとっての唯一の製品である自動車の在り方が一変しかねない激震を乗り越え、会社の体制そのものをつくり直すために、今年67歳になる自身が引いて、若い力に任せようとしたというわけだ。
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