会社の存在を脅かす重大な人権侵害であるハラスメント。人権を守る対策の遅れは、ビジネスに甚大な影響を及ぼす。トヨタ自動車やパナソニックは、パワハラで社員が自殺した過去を踏まえ、創業者の思いや存在意義を見つめ直し、社員教育に力を入れる。ESG(環境、社会、企業統治)が注目され、投資家の目も厳しくなる中、サステナブルな経営の実現は人権尊重から始まる。ハラスメント対策に終わりはない。国際的にも「人権とビジネス」への意識が高まる中、「環境への意識は高いが人権への理解が足りていない」といわれるニッポン。社員一人ひとりの意識を変えていく取り組みは始まったばかりだ。

■連載予定 ※内容は予告なく変更する可能性もあります
(1)威圧的な説教に公私の拘束も、なぜパワハラはなくならないのか
(2)いつの間にか「パワハラ大国」のニッポン ハラスメント保険に殺到
(3)あなたもパワハラ予備軍かチェック、「グレーゾーン」に気を付けろ
(4)増殖する「XXハラ」、これがハラスメント大全だ
(5)先進企業のパワハラ対策に学ぶ、ネットフリックスは撮影前に議論
(6)トヨタ、パナソニックが得た教訓、人権意識向上待ったなし(今回)
(7)「表に出るようになったのは救いがある」、スペイン指導者が語る日本サッカー界の現状
(8)「パワハラは上司のエゴだ」、元パワハラ上司が変心できた理由
(9)「パワハラ防止法」が中小に適用拡大も、対策進まぬ現場
(10)パワハラ誕生から20年、名付け親が抱く懸念「救済から排除の言葉に」

 「11年間放置されたのは、社内の隠蔽体質によるもの。いまだ道半ば。同種事案の再発防止に努める」

 2021年10月、トヨタ自動車の豊田章男社長は、「同社内でパワハラなどを受けて夫が自殺した」などと裁判に訴えていた遺族に謝罪し、社員の業務管理などの徹底を約束した。

トヨタ自動車の豊田章男社長は、パワハラ防止のために風通しのいい組織づくりに一層力を入れる(写真:つのだよしお/アフロ)
トヨタ自動車の豊田章男社長は、パワハラ防止のために風通しのいい組織づくりに一層力を入れる(写真:つのだよしお/アフロ)

 同じく12月、パナソニックは富山県砺波市の同社工場に勤めていた43歳(当時)男性が19年に自殺した事案で遺族と和解した。遺族によると、男性は長時間労働を強いられていたのを苦に命を絶った。同社は自殺に至った一因と認め、遺族に陳謝した。

 2社以外にも三菱電機や電通(現電通グループ)など、過去にパワハラなどで社員が自殺するケースは、後を絶たない。ハラスメントは極めて悪質な人権侵害であり、人命に影響を及ぼすと肝に銘じなければならないだろう。

日本企業は「環境>人権」の状況

 「日本の企業は、環境問題などへの意識は高いが、ハラスメントなどの人権に対する根本的な理解が足りていない」。ビジネスと人権の問題に詳しいオウルズコンサルティンググループの羽生田慶介CEO(最高経営責任者)はこう指摘する。

 ハラスメントの撲滅には、社員一人ひとりの意識を根本から変え、底上げしていく努力が不可欠だ。

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