現存する最古ベンチャーキャピタル(VC)にして最大手のジャフコ グループ。創業間もない新興企業に出資・伴走し、その成長とともにリターンを得るビジネスモデルを日本に広めた。そんな老舗に、試練が相次いでいる。
米銀シリコンバレーバンクの破綻に象徴される「スタートアップ 冬の時代」。著名投資家の村上世彰氏らによるジャフコ株の大量取得をきっかけに突き付けられた「上場の意義」。転換期を迎えるジャフコは、どう歩んでいくのか。間もなく就任1年を迎える三好啓介社長に聞いた。
米銀シリコンバレーバンク(SVB)が3月10日、経営破綻しました。スタートアップを主な顧客としており、危機感が広がっています。
三好啓介・ジャフコ グループ社長(以下、三好氏):(8日にSVBの資本増強策の発表があり)大丈夫だという発信があって、(9日に)取り付け騒ぎが起きて、その翌日には破綻。このスピード感は、不安心理を表していると思います。新型コロナウイルス禍での異例の金融緩和の「出口」がどうなるかということに対する不安感は、シリコンバレーに限らず、皆が持っているのだと思います。今後、世界的に出口に向かっていく中、何がどう連鎖して、どんなことが起きるのかは誰にも分からないということだけは、確かでしょう。
![[みよし・けいすけ]](https://cdn-business.nikkei.com/atcl/gen/19/00304/031600124/p1.jpg?__scale=w:500,h:333&_sh=02706d0f90)
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出資先のスタートアップには、預金の引き上げなど具体的な助言をしたのでしょうか。
三好氏:状況確認を続けている途中です。(ジャフコのグループ会社である米国拠点の)VCは、出資先企業の状況に応じて対応しています。スタートアップのエコシステム(生態系)に与えるリスクを考えて、「一斉に(預金を)引き上げろ」というメッセージは避けました。
今後、スタートアップは「モードチェンジ」が必要ということでしょうか。
三好氏:モードチェンジはもっと以前に起きています。経営環境が大幅に悪化する可能性がある中、保有するキャッシュ(現金)をどう使い、どんな経営体制に移行すべきなのか。シリコンバレーバンクの破綻前(の米国の利上げが本格化した頃)から、「これは確かだ」と言い切れるものがないという状況は、続いていたとみるべきでしょう。
加えて、米国と日本だと少し状況は異なっています。米国では今回の破綻のようなことが起きていますが、日本のスタートアップを取り巻く環境は、極端な変化は起きていません。
日本と世界の環境が異なる原因は何でしょうか。
三好氏:一番は金利でしょう。日本は低金利の環境が続いています。世界はもう「冬」に突入していて、日本は冬の兆候が感じられるというところです。それが極寒なのか、そこまで寒くならないのか。いずれにせよ、スタートアップの二極化は始まりました。
海外投資家がリスクオフの姿勢になったことで、オファリングサイズ(新規上場の株式売り出し規模)が非常に小さくなりました。価値が認められているスタートアップは相応の時価総額となっていますが、一方で値段が付きづらいIPOもありますね。この二極化の傾向は、続くでしょう。
「非常に恥ずかしい話」村上氏の影響で出資募集が停滞
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