ファミリービジネスでも最近は会社や家庭内で親子間の事業の引き継ぎについて真剣な対話がなされないケースが多い。ワークショップでは講師が第三者としてファシリテーションを行いながら対話の促進を図る。

早大国際ファミリービジネス総合研究所長を務める長谷川博和教授
早大国際ファミリービジネス総合研究所長を務める長谷川博和教授

 長谷川教授は「欧米のビジネススクールで広がる手法で日本では初めての取り組みになる。実践的で一族の個別ニーズにも対応できる」と話す。しっかり話し合うために参加企業は原則として1業種1社に限定し、あらかじめ秘密保持契約を結んだ上で実施。課題解決すると同時に、話し合いを通じて参加者同士のネットワークづくりも進める。

 座学では「経営理念論」「ファミリー企業におけるリーダーシップ論」「ファミリー企業の新規事業開発」などのほか、倫理・哲学科目としての「古典を学ぶ」や地政学の「中国のハイテク産業政策と米国・日本」といったユニークな内容もある。「ファミリー企業のガバナンス論」や「後継者及び幹部の育成論」なども扱い、米国バブソン大学の著名研究者もリモートで講義する。

 学位などはないが、全体の70%以上の科目に合格すると「ファミリービジネス経営革新プログラム」修了証が発行される。プログラム修了後も受講者は1年間、事前に指定した講師がメンターとなり、所定の時間内で経営革新のサポートを受けられる。

早大出身者、目立つ同族承継

 ライバルの慶応義塾大学はファミリービジネスの一族の子弟が多いイメージが強いが、実は早大の出身者も一族の事業を引き継ぐケースが増えている。帝国データバンクが18年に発表した「全国社長出身大学分析」によると、早大出身の社長1万283人のうち「同族承継」は43.7%となっており、「創業者」の30.1%を大きく上回る。その分、ファミリービジネスの研究や教育に対する期待が高まっている。

 早大では12年に国際ファミリービジネス総合研究所を開設。現在、9人の研究所員がいる。今回のプログラムには参加していないが、同研究所のメンバーには内田和成氏や入山章栄氏らの著名教授も名前を連ねており、質と量の両面から国内有数のファミリービジネスの研究拠点となっている。

 また早大ビジネススクールでは事業承継の予定のある後継者を対象に、現在の経営者による推薦状に後継者の資質も加味して選考する「事業承継者入試」を導入。ビジネススクールにはファミリービジネスに関連した科目もそろっており、積極的な取り組みが進む。

 早大以外でも、例えば東京大学の経済学研究科金融教育研究センターが18年に「日本経済を支えるファミリービジネス――地方創生の主役」とするセミナーシリーズを開催するなど、このところ大学はファミリービジネスに対して積極的な姿勢が目立つ。

 国の試算では、25年までに127万社の中小企業・小規模事業者で後継者が未定となる見通し。コロナ禍の影響がなくても、経営者の高齢化によって言うまでもなく事業承継は日本経済の大きな問題だ。早大のプログラムなど、教育サービスの分野から様々な課題に応えようとする動きが広がってもおかしくない。

この記事はシリーズ「ガバナンスの今・未来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。