国の試算によると、2025年までに約60万社が後継者難のために「黒字廃業」に追い込まれるおそれがある。後継者不足による「大廃業時代」に、新型コロナウイルス禍が重なり事業を諦めるケースが増えている。一方、社会や企業の課題解決にこそ次の事業のヒントがあるのはビジネスの定石。事業承継をめぐるサービスは多様化し、新たな市場も拡大している。連載でその動向の最前線を伝える。

 受講料660万円、親子対話を促すことでファミリービジネスの承継を支援し、経営革新をサポートする――。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センターが事業承継を考える企業に向けて開く合宿制の高額プログラムがコンサルタントや大学関係者の注目を集めている。

 プログラムの正式名称は「ファミリービジネス経営革新プログラム」。対象は「一族及び一族企業の永続性を目指し、経営革新を志向するファミリー企業(株式所有または経営者に占める一族の比率が高い企業)」で、応募資格は「後継者が事業承継の前後にある」「売上高がおおむね300億円以上」「純資産がおおむね50億円以上」としている。4社限定で実施し、参加するには事前に書類審査などをクリアする必要がある。

「ファミリービジネス経営革新プログラム」は4社限定で実施
「ファミリービジネス経営革新プログラム」は4社限定で実施

 高額の受講料も考えると、参加するためのハードルは高いようにも見える。しかし、合宿しながら複数のファミリービジネスの経営者が事業承継について受講するプログラムはスイスのIMDや、米国のハーバード大学などの有名ビジネススクールでも開かれ、宿泊代別で1000万円を超えるケースが多い。

 日本から参加するには渡航費用もかかる上、英語という壁もある。これに比べると今回のプログラムは宿泊代が含まれ、日本語で受講できる。早稲田大学国際ファミリービジネス総合研究所長で同大学ビジネススクール(同大学大学院経営管理研究科)の長谷川博和教授は「専門的であり、しかも一方通行でないプログラムが豊富にそろっており、受講料に見合った内容となっている」と自信を示す。

 当初は22年1月スタートの予定だったが、参加者が直接コミュニケーションする内容が多くコロナ禍で延期。春以降に実施する方向で調整している。既に申し込み企業があり、プログラムの内容や参加資格などについての問い合わせも少なくない。

親子や親族が参加

 同プログラムはファミリービジネスの事業承継を円滑に進めると同時に、ビジネスモデルや企業体質の変革を促すことを目指しており、企業単位で申し込む。1社最大4人までのチームで参加し、メンバーには世代交代を控えた親子に加えて、事業にかかわる他の親族、事業承継を支えることが期待される非一族の経営幹部なども参加できる。

 業務を離れて集中した環境で行うために「1モジュール」が2泊3日の合宿制で実施し、4カ月ほどの期間に3モジュールを実施する。会場は早稲田キャンパス(東京・新宿)内で、宿泊は早大の敷地にある高級ホテル「リーガロイヤルホテル東京」となっている。希望があれば1社6人まで増やすことができる仕組みで、追加は1人33万円(宿泊代別)かかる。

 講師は早大ビジネススクールの教員のほか弁護士、公認会計士、コンサルタントらが担当する。目玉のワークショップでは、受講者がいろいろな形で自由に討議する。統一テーマについて全体で語り合うほか、参加企業の「個別の経営テーマについての討議」、企業の枠を超えた「親世代だけ」「子世代だけ」などの形でも話し合う。

次ページ 早大出身者、目立つ同族承継