2021年6月25日に開催された山口フィナンシャルグループ(FG)の臨時取締役会。これまで見てきたように、当時CEOだった吉村猛氏と社外取締役の間で、新銀行プロジェクトの進め方、そしてCEOの権限について議論されていたことが内部文書から分かった。論点を整理する。

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内部文書が示す山口FGトップ解任の内幕 取締役会で何が起きたか
「ルール違反がどこにあったのか」 実録・山口FGトップ解任劇

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

 山口フィナンシャルグループは2021年6月25日の取締役会後、代表取締役の異動に関する記者会見を開き、経緯を説明した。「吉村氏が事実上代表取締役会長兼CEOを解任」と世間を騒がせた。

 吉村氏は「これは一部の取締役が主導したクーデターだ」などと訴え、第三者による社内調査委員会を設置して調査に乗り出すよう要請した。

 しかし山口FG側はそれに応じず、21年12月24日に吉村氏の取締役解任を審議する臨時株主総会の開催を決めた。その前日の23日、吉村氏が取締役辞任を自ら申し出て、事態は沈静した。

 取締役会のやりとりで分かるように、「CEOの権限はどこまでか」については不明瞭な点が多い。吉村氏の解任劇は、一企業の問題ではなく、日本企業のガバナンスの課題を浮き彫りにした。吉村氏、山口FG側の主張を見ていきたい。

 まず、大きな前提がある。そもそも「CEO」や、「COO(最高執行責任者)」「CFO(最高財務責任者)」「CTO(最高技術責任者)」「CSO(最高戦略責任者)」などのいわゆる「CxO」と呼称される役職は、日本の法律上定められていない。代表取締役が法的に定められている最も権限が大きいポストだ。代表取締役が会長の場合や社長の場合もあり、その両方に就くこともある。

 そうした中、山口FGが21年10月に公表した社内調査報告書で、株主総会での吉村氏の取締役解任議案を付議した理由の一つとして挙げたのが、吉村氏の「CEOの権限逸脱行為があったこと」だ。

 吉村氏はCEOを解任される約1カ月前の5月28日の取締役会で、アイフルと共同で新銀行を設立するプロジェクトを報告した。新銀行のCEOにコンサルティング会社のE氏の就任で合意しているなどと説明。

 これに対し山口FGの社外取は、新銀行設立については経営における重要事項であり、この件やE氏の採用が結論ありきになることを懸念した。新銀行計画やE氏の採用について、取締役会の決議なくアイフルと合意したことを問題視したわけだ。

 しかし、吉村氏は「E氏の採用が否決されるのであれば、プロジェクトも否決されることになると考えている」などと話し、押し切る姿勢を示した。吉村氏は「新銀行計画は、検討を開始するかどうかという非常に不確定要素が多い初期的な段階で取締役会に付議した」と反論する。

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