従来、中興の祖の登場は多分に偶然によるものだったが、変化のスピードが速く先の読みにくい時代にあっては、組織として戦略的に中興の祖たる人材を育てることが必要だ。連載9回目では、今回の経営者ランキングと一連の取材を通じて導き出した人材育成戦略の5カ条を紹介する。

 理想をいえば、企業の経営は右肩上がりが望ましいが、浮き沈みがあるのが現実だ。むしろ逆風に見舞われたときにこそ、その企業と経営者の真価が問われるともいえる。難局を乗り越えて再び企業を成長軌道に乗せた人物が中興の祖とたたえられるのは、人々がその経営者の優れた才覚を認めた証しだ。

 コマツの坂根正弘氏はその典型例といえる。IT(情報技術)バブル崩壊の余波で史上初の赤字に直面する中で社長に就任し、日本企業の中でいち早くデジタルトランスフォーメーション(DX)を果たした。

コマツの坂根正弘氏(写真:ロイター/アフロ)
コマツの坂根正弘氏(写真:ロイター/アフロ)

危機こそ改革のチャンス

 経営危機は、構造改革を受け入れる機運が高まっているという意味ではチャンスでもある。従来の構造にメスを入れるには、課題意識が何よりも大切だ。そのため、主流派とは違った視点を持つ傍流出身が中興を成し遂げるケースも多い。

 創業家の三男で入社以来一貫して冷や飯食いだった武田薬品工業の武田国男氏、主力の空調部門ではなく人事総務畑を歩んだダイキン工業の井上礼之氏らがそうだろう。

 非主流派の人材が企業再生の立役者となる事例を踏まえて、国際大学の橘川武郎副学長は「中興の祖にはややとがった人が多い。主流派以外の人材もきちんと処遇して、(トップ交代の)プランAだけでなくプランBも用意しておくのが望ましい」と提案する。もちろん、両者の選定基準はきちんと区別しておく必要がある。

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