企業と株主の対立、企業の不祥事、企業の私物化――。いつの時代も絶えないこうした問題のカギを握るのが、企業に対する監視や内部統制を効かせる「コーポレートガバナンス(企業統治)」だ。投資家はガバナンスを重視して企業を選別し、ガバナンスの不全は企業の評価をおとしめることにもつながる。「正しい会社」とは何か。ガバナンスの今と未来を追う。(写真:Shutterstock)
シリーズ
ガバナンスの今・未来

114回
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「日銀の天下り」を物言う株主が追及 問われる日証金上場の意味
日本証券金融は2月7日、大株主の投資ファンド・ストラテジックキャピタル(東京・渋谷)の請求に応じ、臨時株主総会を開く。同社は「上場以来、日証金の歴代社長は日本銀行OBだ」として、「天下り」の実態調査を行う弁護士選任を株主…
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リケン・日ピス統合にも影響か 公取委、「難産」の脱炭素ガイドライン
公正取引委員会は1月、脱炭素を狙った企業の協業を促進するため、独占禁止法のガイドライン案を発表した。企業が共同で新たな脱炭素技術の開発や、環境負荷が小さい材料の調達に取り組むとき、独禁法違反を懸念することがある。過度な萎…
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「謝罪会見は開かない」は賢い選択か ある有力菓子メーカーの教訓
謝罪を巡って取り上げたいことの一つに「会見を開かない」という企業のトレンドがある。個人がネットで情報を収集することを前提に、自社のウェブサイトに謝罪文を載せるケースが増えた。会見を開くべきかどうかの境界線はどこにあるのか…
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「生娘シャブ漬け」謝罪した吉野家 実は女性活躍、訴える機会逃す
不祥事を受けて謝罪する企業が相次いだ2022年。牛丼大手の吉野家ホールディングス(HD)では、多様性やジェンダーの重要性が指摘される時代の流れに、完全に逆行する役員の発言が問題になった。役員1人の発言ではあったが、吉野家…
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SMBC日興や日野自動車 生配信された謝罪、トップ悩ます大衆監視
あらゆる企業にとって、不祥事はいつでも起こり得る。事業を営んでいる限り、隣り合わせのリスクだ。実際に不祥事が起こってしまったら、経営の危機ととらえて対応することが必要になる。多くの場合は謝罪することになるが、ソーシャルメ…
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日本の企業統治の進化を強調した岸田首相 市場の評価は道半ば
9月、岸田文雄首相は米ニューヨーク証券取引所で講演し、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の進化を強調した。東証プライム市場上場企業では社外取締役の増員が急ピッチで進むが、上場企業の半分程度は株価が本来の企業価値を下…
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ボード3.0では投資家以外のステークホルダーにも配慮を
企業と社外取締役の理想の関係を探るインタビュー。2回目は学校法人「成蹊学園」の学園長で、社外取締役の経験も豊富な江川雅子氏に聞いた。
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社長辞任を迫られても納得する人こそ社外取の理想
企業と社外取締役の理想の関係とは――。日本の企業統治の現状と課題を、ガバナンスや経営人材に関するコンサルティングを手掛けるボードアドバイザーズ(東京・千代田)の佃秀昭社長に聞いた。
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“お飾り”の女性社外取 株価は上がるが業績は上がらず
ここ1~2年で、社外取締役を経営に生かせている企業とそうでない企業の差が開いている。社外取を“お客さん扱い”せず、その経験やノウハウを還元してもらうお膳立てをすることが欠かせない。また、女性社外取を入れただけ業績が上向く…
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“女性社外取バブル”の光と影 日本のガバナンス改革の現在地
組織の多様性を象徴する女性社外取締役の需要が急増している。選任企業は1300社を超え、10年前の約19倍とバブルの様相だ。コーポレートガバナンス・コードの改定などが背景にあるが、人材不足もあって数合わせが優先され、社外取…
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富士通と日立の改革支える「外部の目」 社外取が取締役会を活性化
かつて総合電機の雄として覇を競った富士通と日立製作所。だが、リーマン・ショックやグローバル競争の激化などの逆風を受け、事業の選択と集中による構造改革を進めてきた。この間、「外部の目」として改革を支えたのが社外取締役。マー…
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丸井グループが掲げる日本版ボード3.0 社外取は長期投資家
ボード3.0の要素を取り入れたガバナンス体制を構築し、2022年3月期から5年間の中期経営計画をスタートさせた丸井グループ。同社の株主である、みさき投資(東京・港)の中神康議社長を社外取締役に迎えた。「市場のドライな目線…
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日本でもボード3.0 アクティビストと元経営者のオリンパス改革
巨額の粉飾決算発覚から約10年。オリンパスが社外取締役の力を借りて業績を急回復させている。立役者は蛭田史郎・旭化成元社長ら元経営者と、物言う株主(アクティビスト)の米バリューアクト・キャピタルだ。経営陣はアクティビストを…
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ボード3.0の源流にジョブズ氏も 閉塞感を打ち破るきっかけに
企業革新に必要な社外の人材を取締役に招く「ボード3.0」。名付け親で、米コロンビア大学のロナルド・ギルソン名誉教授によると、米アップルのスティーブ・ジョブズ氏の時代から先進的な経営者の間では受け入れられていた発想だという…
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ボード3.0の巨人エクソン アクティビスト社外取が脱炭素を主導
物言う株主(アクティビスト)から3人もの社外取締役を受け入れた米石油大手エクソンモービル。仕掛けたファンドはエクソン株を0.02%しか保有していなかったが、脱炭素対応の遅れが将来の多大な損失につながりかねないと主張し、他…
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[新連載]最先端のガバナンスで混乱する東芝 社外取締役は必要か
物言う株主(アクティビスト)が社外取締役となり、利害対立に揺れている東芝。最先端のガバナンス体制とされてきたが、経営は上向かず、むしろ混乱に拍車をかけている。一方、米国では敵対的ではない、友好的なアクティビストが台頭。脱…
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三菱電機、DXの欠如が品質不正の温床に 調査委が最終報告
三菱電機は10月20日、品質不正問題について、弁護士らでつくる外部調査委員会の最終報告を公表した。1年4カ月に渡る調査で浮き彫りになったのは、煩雑な検査が人手で行われ、不正の温床となってきたことだ。事業として企業に促して…
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「性加害辞任」に「不倫辞任」、スキャンダルの開示に悩む企業
女性への性加害、既婚男性との不倫――。私生活の不祥事で有名企業の経営者が相次ぎ辞任した。社会の価値観が変わり、経営者は業務上か否かにかかわらず、常に世間の厳しい視線にさらされる。私事であっても顧客離れにつながりかねず、専…
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[スクープ]財務省、日本公庫を検査へ ゼロゼロ融資不正の実態把握
新型コロナウイルス禍で資金繰りに苦しむ企業を下支えしてきた「ゼロゼロ融資」を巡り、財務省と中小企業庁が日本政策金融公庫の立ち入り検査に着手する。公的な危機対応融資の実態チェックは異例だ。
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日野自動車の不正がまた拡大、親会社トヨタとの「適温関係」揺らぐ
日野自動車によるエンジン試験の不正は小型トラックにも対象が広がり、国内向けの全車種が出荷停止になった。50%強出資する親会社、トヨタ自動車の豊田章男社長は日野自に自己改革を迫る異例のコメントを発表した。子会社化から約20…
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ロシアを足掛かりに、欧州経済・金融市場の調査を担当して、既に十数年の月日がたちました。英国の欧州連合(EU)離脱…
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従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保することを企業の努力義務として定めた、改正高齢者雇用安定法が2021年…
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