米中の覇権争いに新型コロナウイルスの感染拡大、地球規模の気候変動──。経済効率を優先して企業や国が構築してきたサプライチェーンが今、危機にさらされている。産業のコメといわれてきた半導体は今や国際戦略物資となった。前回は米中の対立のはざまでしたたかに生きようとする半導体メーカーの取り組みや半導体の国内生産への動きに触れた。現在も世界で高い競争力を維持している半導体の製造装置や材料に関連する企業はこの大変動をどう生き残ろうとしているのか。

 米IBMは5月7日、回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルを用いた半導体チップの開発に成功したと発表した。現在の先端である7ナノメートルのチップより高速処理能力は45%高く、エネルギー消費は75%少ない。爪の先ほどのチップに500億個のトランジスタを搭載できる。

米IBMが開発した2ナノメートルプロセスの半導体チップを形成したシリコンウエハー
米IBMが開発した2ナノメートルプロセスの半導体チップを形成したシリコンウエハー

 ただ、回路線幅を縮小し1チップに搭載するトランジスタの集積密度を高める「ムーアの法則」はいよいよ限界を迎えつつある。国内外の半導体大手は最先端の微細化技術の開発から手を引いており、研究開発と生産に巨額の投資をして「体を張っている」のは台湾積体電路製造(TSMC)、米インテル、韓国サムスン電子のビッグ3くらいだ。IBMは半導体こそ生産していないが、研究開発は継続していて世界の技術革新をリードしている。これら先頭集団の会社でも2ナノメートル以下の壁を越えるのは至難の業だ。

 「IBM超え」の非連続イノベーションを生み出す──。世界の半導体メーカーが跳ね返される2ナノ以下の半導体製造技術に挑む動きが日本で出てきている。東京エレクトロンやキヤノン、SCREENセミコンダクターソリューションズの国内半導体製造装置メーカーが産業技術総合研究所と組み、茨城県つくば市でパイロットラインを構築し研究開発する。新規開発や大幅な性能向上が必要となる製造・プロセス技術を開発し、2ナノメートル以下の半導体製造技術の確立を目指す。

 限界突破に挑むテクノロジーがあることからも分かるように、日本の半導体産業は衰退したにもかかわらず、製造装置や材料には世界トップクラス企業がきら星のごとく存在する。

日本の半導体産業は衰退したが、製造装置や材料では依然として強い企業が存在する
日本の半導体産業は衰退したが、製造装置や材料では依然として強い企業が存在する
[画像のクリックで拡大表示]

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1452文字 / 全文2356文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「今そこにあるサプライチェーン危機」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。