ファウンドリー誘致に動く経産省と自民党

 日本の半導体メーカーが、対立する米中のはざまで戦略の見直しを迫られる一方、自動車やIT機器に関連する企業では、いかに半導体を安定的に調達するかが喫緊の課題となっている。トヨタ自動車、ホンダ、米ゼネラル・モーターズなど世界自動車大手の生産が半導体不足で滞っている。アフターコロナを見据えたデジタル化の加速、自動車生産の急回復、半導体工場の事故などいくつもの要因が重なり、半導体の需給バランスが大きく崩れたためだ。半導体争奪戦で神経質になっていた各国は調達リスクを解消すべく、半導体量産機能の誘致合戦に動き出した。

 経済産業省はキーデバイスの枯渇リスクを放置できないと判断し、新規もしくは増設で半導体量産工場を立ち上げて世界的な受託製造会社(ファウンドリー)に運営を任せたい意向だ。「指をくわえて欧米の動きを見ているわけではない。今回の半導体工場誘致のチャンスを逃したら日本の半導体産業の存在感はさらに低下する」(経産省デバイス・半導体戦略室の刀禰正樹室長)。こうした議論を国の半導体戦略を検討する有識者会議の「半導体・デジタル産業戦略検討会議」のメンバー間で議論している。

 最有力候補とみられるファウンドリー世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は日本国内での量産工場立ち上げには今のところ慎重姿勢だが、茨城県つくば市に研究開発拠点を設置する。

 経産省には強力な後ろ盾もある。5月21日、自民党有志による「半導体戦略推進議員連盟」が発足した。会長の甘利明税制調査会長は「半導体戦略は国家の命運をかける戦いになる」と気炎を上げた。日米台のサプライチェーン強化に取り組み、財政支援で研究開発や生産能力強化を後押しする構えという。

 半導体の量産拠点を域内に置こうと、各国は誘致策を打ち出す。米国はアリゾナ州にTSMCの工場を誘致し、バイデン大統領は半導体産業に500億ドル以上の補助を表明した。一方、TSMCは中国の生産強化の求めに応じ、南京工場を増強。欧州連合(EU)はファウンドリー事業を強化する米インテル、TSMCに両にらみで秋波を送る。約18兆円を投じて最先端半導体の生産シェアを約10%から30年に20%に引き上げる。

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 英調査会社オムディアによれば、日本に本社を置く半導体メーカーの市場シェアは2020年に9%となり直近10年で半減した。1980年代後半に世界シェア5割を占めた「半導体大国」の面影はない。国内半導体産業は日米貿易摩擦で標的となり骨抜きにされた後、電機大手が復活を狙ったシステムLSI事業が失敗に終わり、さらに設計開発と製造を分離する水平分業の流れに乗り遅れた。

 電機大手は赤字続きの半導体事業を切り出して集約。ルネサスなど半導体メーカーは不振脱却のため生産能力縮小に取り組んだ。巨額の投資がかかる先端半導体の開発や生産をファウンドリーに任せ、製品の設計開発に経営資源を集中させる「ファブライト化」を進めた。米国や欧州では工場を持たないファブレス半導体メーカーが多く誕生した結果、ファウンドリーに生産が集中。とりわけ最大手のTSMCが約5割のシェアを占める「TSMC依存」というひずみが生まれた。

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