単純に経済合理性で考えると、電力は石炭火力が安い。電力自由化が進んだ一方、キロワット時あたりの費用で電力を選ばれると、温暖化ガス削減の原資を確保しづらくなる。再エネの発電コストとの差額について、例えばビル・ゲイツ氏ならグリーンプレミアムと呼んでいる。市場で再エネが選択されるには、二酸化炭素の削減効果を発電価値として織り込む制度設計が求められる。

具体的な価格は、いくら必要になりますか。

 まだ温暖化ガス実質ゼロまでの費用計算はできていないが、日本による従来目標の「2050年に13年比80%減」への必要金額は試算した。再エネの開発量やコスト低減など複数の仮定に基づき、同年には二酸化炭素1トンあたり3万1000円の価格付けが要るとみている。ただ、再エネ費用が低下しなければ同4万円が必要になるため、イノベーションや仕組みづくりが重要だ。

遠く離れた再エネの発電適地から、東京に送電する設備も必要だ(写真:PIXTA)
遠く離れた再エネの発電適地から、東京に送電する設備も必要だ(写真:PIXTA)

CPで再エネの需要が高まると、電力会社の設備投資も求められますね。

 再エネの普及に向けて、送配電網を段階的に増強することも必要となる。特に課題となるのは、電力消費の多い地域と再エネ発電の適地とが離れていることだ。東電グループのエリア内でも福島沖や新潟沖が洋上風力の設置場所となり得るが、北海道電力や東北電力のほうが自然条件でのポテンシャルは大きい。そこから消費電力の多い東電エリアにどう送電するか。

 大規模な送配電網の増強には、送電線の近隣住民のご理解を得て、用地を取得しなければならない。これには長期間を要し、コストもかかる。既存の設備を効率よく運用していく工夫も重要だ。

秒単位で需給を合わせる努力

再エネの出力変動には、どう対応しますか。

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