日本は温暖化ガスの削減目標を国際公約した。本当に可能か、採算が合わないなど議論百出だが、世界は脱炭素を前提とした未来の均衡点に向けて走り出している。国が示す数字の帳尻合わせより、国際競争下で実行あるのみ。企業は、何ができるのか、何を実現すべきなのか、先進企業の取り組みをつぶさに追う。

 太陽光発電の弱点を克服しようと、電炉大手の東京製鉄と九州電力がタッグを組んでいる。九電はいち早く再生可能エネルギーの拡大にかじを切ったが、扱いきれず「出力抑制」を依頼するケースが増えている。

 家庭や企業があまり冷暖房を使わない季節に、再エネの発電が昼に集中すると、需給バランスが崩れて電力設備が故障しかねないからだ。協力する東京製鉄はこれまで夜間操業が主力だったが、昼にも工場を動かして電力需給をマッチング。環境対応につながる方法で、ライバルの高炉大手にも対抗する。

従来は夜間操業が主力だったが、再エネの利用で昼も稼働しやすくなった
従来は夜間操業が主力だったが、再エネの利用で昼も稼働しやすくなった

 「電気代の安い夜間とあまり遜色なく、昼にも操業できるのがミソです」。東京製鉄の中上正博・九州工場長はこう語る。同社の九州工場(北九州市)は全国に鋼材を出荷しており、建設現場でよく見かけるH形鋼は、国内消費量の1割をこの工場でつくっている。九州電力から前々日に「昼も工場を稼働させてほしい」と連絡を受けると、メンテナンスに入る予定だった人員を調整し、現場に回していく。

従来、フル操業は午後10時から

 この電炉では巨大な黒鉛電極から、大電流による「アーク放電」を起こす。鉄の融点を超える約1600度という高温で、原料の鉄スクラップを溶かしていく。このため電気代が総コストの1割を占め、従来だとフル操業できるのは午後10時以降の夜間だった。

高温で鉄スクラップを溶かすため電力が必要だ
高温で鉄スクラップを溶かすため電力が必要だ

 産業向けの電力料金は、平日の昼だと夜間より5~6割高い。経費がかさむので、鉄スクラップを溶かして半製品の状態まで成形する「上工程」は朝になるとストップしていた。昼に稼働できるのは、実際の製品まで仕上げる「下工程」のみだった。電力消費が相対的に少なく済むためだ。

 しかし、下工程だけ動かすのも生産効率とコスト面で課題がある。在庫しておいた鉄鋼の半製品は常温になっており、そのままでは成形できない。再び1200度まで加熱するためにガス代がかかる。できれば熱いままの状態で使えるよう、上工程と下工程を連続して操業したいところだ。

続きを読む 2/3 電力は「在庫」にできない

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