自然エネルギーは出力が変動する一方、どの瞬間も需給を合わせないといけない難しさがある。九電の阿部副部長は「顧客企業の助力があってこそマッチングが成り立つ」と語る。東京製鉄では工場の従業員を3班に分けて3交代制で操業しており、上げDRに合わせて柔軟に配置を組み直す。

「上げDR」の実施が決まると、電炉の稼働へと人員を配置し直す
「上げDR」の実施が決まると、電炉の稼働へと人員を配置し直す

 気象予報の確度が高まってから要請が来るので、九電からの連絡は2日前の夕方となる。東京製鉄は約2時間で可否を返答し、OKなら電力の「需要創出計画表」を出す。

既存の技術「太陽光」に脚光

 例えば平日昼の電力利用を10メガワットと想定していた日に、上げDRの実施で最大71メガワットに引き上げる。上げDRの1日あたりの電力利用は、最低でも合計300メガワット時(製鋼量だと約800トン)というルールだ。生産計画にいかに組み込むかを常に考えないといけないが、「環境配慮型の経営を確立したい」(奈良暢明取締役)と意気込む。

 政府は30年の温暖化ガス削減について、13年比で46%減という目標を打ち立てた。今から残り9年のため「既存の技術が軸になるだろう」(経団連会長に就く住友化学の十倉雅和会長)との見方が多い。導入までのリードタイムが短いとして、脚光を浴びているのが太陽光だ。出力変動をうまく使いこなすには、電力会社と産業界の協力が欠かせない。

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