上工程ではドロドロに溶けた鉄を半製品にする
上工程ではドロドロに溶けた鉄を半製品にする

 このニーズに九州電力が目をつけた。2017年度には、いずれ九電エリアで太陽光の発電量が多くなりすぎると推測。「普通は省エネをお願いするのに、逆の要請が必要になった」(営業本部の阿部哲理副部長)。そこで余剰な電力を使ってほしいと東京製鉄に話を持ちかけた。東京製鉄は急な工場稼働を実現する代わりに、通常の昼の価格より電力料金を安くしてもらうことで折り合いをつけた。18年秋からこの枠組みが始まり、21年春は九電の要請頻度が高まっている。

 電力の需給調整は「デマンドレスポンス(DR)」と呼ばれる。この場合は需要を上昇させるので「上げDR」と言われ、今では両社の間で頻繁に交わされるワードだ。もちろん東京製鉄だけで余剰電力を使い切れるわけではないが、少しでも需要を創ることが必須になっている。

 しかし、それでも需要を増やすことができず、九電が太陽光発電の事業者に対し、出力抑制を依頼することもある。20年度に九電が要請した回数は60回に達し、さらに21年度は95回を想定する。1日1回だとすると、1年の4分の1以上、系統につなぐ発電量を抑え込むことになる。

 九電の場合、総電源に占める再生可能エネルギーは23%ある。とはいえ国全体でもっと再エネを増やそうと議論しているのに、なぜ出力抑制が必要なのか。答えは、身近に思える電力がとてもやっかいな商品のためだ。

電力は「在庫」にできない

 電力網を安定的に維持するためには、常に需要と供給が「同時同量」でないといけない。需要が供給を上回ると電圧が下がったり、停電したりする。反対に、供給が需要を上回ると周波数が乱れ、最悪の場合は発電機がストップする。一般的には電力が足りないと困るイメージだが、逆に多くても稼働できない。他のインフラと異なり、在庫を持とうとしたら停電リスクにつながってしまうのだ。

 日本では特に春と秋の昼、エアコンの需要があまりない一方で日射量はあるので、太陽光発電による電力が系統に流れ込みすぎない調整が必要となる。九電ではまず、揚水発電所で水をダムにポンプで上げて自ら電力を使う。さらに火力発電の出力を下げつつ、関門海峡を横断する送電線「関門連系線」によって本州へ電力を融通する。それでも電力が余ると太陽光事業者への出力抑制に踏み切る。

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