新型コロナウイルス感染の「第5波」を越え、感染者数や死者数が急減した日本。社会は少しずつ、コロナ前の日常を取り戻そうと動き始めた。では、コロナ禍はもう終わったと考えていいのか。感染対策の緩みやワクチンの予防効果の減衰、変異ウイルス出現の可能性など、感染の火種がいまだくすぶる中、手を緩めてはならないのが医薬品開発だ。
コロナの「第6波」にどう備えるべきかを探る本特集「壊れない医療への道」。第3回となる今回は、治療薬とワクチン開発の最新動向を報告する。
■掲載予定
(1) 緩む社会、あちこちに「3密」 コロナ感染防止と日常回復のはざま
(2) クラスター散発する北海道の苦悩、神経すり減らす自治体や施設
(3) 飲み薬に国産ワクチン、そろってきた対コロナの矛と盾(今回)
(4) 日本の医薬品業界、ワクチン・治療薬とどう向き合うべきか
(5) 強い医療はこうつくる 地域編
(6) 強い医療はこうつくる 病院編
(7) 厚生労働相に聞く「第6波への備え」
※内容は予告なく変更する場合があります

「人類にとって素晴らしい日だ」
11月5日、米製薬大手のファイザーは開発中の抗ウイルス薬が、重症化リスクの高い新型コロナ感染症患者の入院と死亡のリスクを89%低減したとする臨床試験の中間解析結果を発表。アルバート・ブーラCEO(最高経営責任者)は胸を張った。
2020年から世界に急拡大した新型コロナ感染症の患者に対してどんな治療薬を提供できるか。医薬品メーカーに突き付けられた課題に、ついに答えが見つかったのだろうか。
軽症者向け治療薬が続々
新型コロナ感染症の発症後に使える治療薬は徐々に増えている。日本での承認が先行したのは中等症から重症の患者に使えるものだった。「レムデシビル」(米ギリアド・サイエンシズ)や「デキサメタゾン」(日医工)などが医療の現場で使われてきた。
21年7月には軽症患者にも使われる中和抗体薬の「ロナプリーブ」(中外製薬)が承認され、11月からは発症抑制の目的でも使えるようになった。9月には同じく中和抗体薬の「ゼビュディ」(英グラクソ・スミスクライン:GSK)が承認された。
これらの中和抗体薬は、ウイルスに対する抗体を注入して増殖を抑え、軽症患者を重症化しにくくするものだ。複数の抗体を組み合わせて注入するものは「抗体カクテル療法」と呼ばれる。発症してから数日以内に投与するのが望ましいが、注射で投与するため発症直後に医療機関に受診しなければならず、使いにくい。
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この記事はシリーズ「新型コロナと闘う「医療最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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