「周りがワクチン接種した人なら安心」

 こうした不満や政策への違和感はコロナ以降、マグマのようにたまってきた。ワクチンを2回接種した人が人口の76.2%(11月22日時点)に達したとはいえ、ワクチン接種が進んだ国で感染が拡大した例もある。一気に行動が緩めば、再び感染が拡大しかねない。政府も「今後は感染拡大を防止しながら、日常生活や経済社会活動を継続できるよう行動制限の緩和の取り組みを進めていく」との方針を掲げる。

 その取り組みである「ワクチン・検査パッケージ」の一つの舞台になったのが、セ・パ両リーグの1位同士が日本シリーズへと駒を進めたプロ野球のクライマックスシリーズ(CS)。ここで、スポーツ観戦を日常に戻すための社会実験が行われていた。

 11月10日のセ・リーグCSファイナルステージ第1戦。午後4時の開場を前に、ヤクルトや巨人のユニホームに身をまとった人々が続々と東京都新宿区の明治神宮野球場に集まってきた。球場と道路を挟んだ向かいにある軟式球場横の噴水スペースに、小さな人だかりができている。

 ここが「ワクチン証明・陰性証明チェックブース」と呼ぶ実験場だ。観客はワクチン接種記録か陰性証明を提示し、確認できた場合にはスタッフが配る赤色のリストバンドを手首に着ける。リストバンドを着けた観客のみが神宮球場内の特定のエリアに固まり、席の間隔を空けずにCSを観戦するというもの。まさに「コロナ前」の状況で感染者を出さずに試合が運営できるかを試す。5000人分の対象チケットは完売した。

セリーグCSファイナルステージで「ワクチン・検査パッケージ実証実験」が行われた
セリーグCSファイナルステージで「ワクチン・検査パッケージ実証実験」が行われた

 この実験に参加した巨人ファンの18歳の男子大学生は「野球観戦に来るのは今年初めてで、ずっと我慢していた」と熱く語る。周囲の観客がワクチン接種証明を受けているかどうかで「気持ちは全然違う」。50代と10代の母娘はコロナ前までは月1回のペースでヤクルトの応援に来ていたが、今年はこの日が2回目。「周りがワクチン接種した人たちなのはやっぱり安心」と話し、ヤクルトの勝利を宣言して球場へ向かっていった。

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