コロナ前に戻ったのか。そんな錯覚さえしてしまうほど、街中には「3密」があふれている。それでも感染者数は抑えられたまま。もう、社会や経済を日常に戻してしまってもよいのか。それとも今は「第6波」のとば口に立っているのか。
感染者数の減少とともに、徐々に日常へ戻そうとする動きが始まっている。ただ、海外からは「過去最悪の感染拡大」といった声も聞こえてくる。第6波は来るのか。いつ、どれぐらいの規模になるのか。たとえ来た場合でも、第5波までに起こったような医療の逼迫を起こさないためにはどうすればいいのか。
特集「壊れない医療への道」と題して、新型コロナの第5波を収束させた日本の今とこれからをリポートしていく。
■掲載予定
(1) 警戒緩む社会、あちこちに「3密」(今回)
(2) 神経すり減らす自治体や施設、クラスター散発する北海道の苦悩
(3) ワクチンと新治療薬はどうなる、開発・承認状況とその期待
(4) 日本の医薬品業界、ワクチン・治療薬とどう向き合うべきか
(5) 強い医療はこうつくる 地域編
(6) 強い医療はこうつくる 病院編
(7) 厚生労働相に聞く「第6波への備え」
※内容は予告なく変更する場合があります
「いやー、久々に楽しんだな」「あの鍋は最高だったね」
11月中旬、札幌市の繁華街・すすきのにある飲食ビルではこんな会話が響いていた。「金曜日、土曜日になると満席になる」と話すのはジンギスカン料理店の店員。10月中旬まで臨時休業していたというバーでも「お客さんから『ずっと営業再開を待ちわびていたよ』といった声をいただく」(マスター)。満席で客に入店を断ることも多いという。
マスクを外したり、アクリル板をよけたり…
「もう少し声のトーンを下げてもらえますか」。東京・新橋の居酒屋「根室食堂」店主の平山徳治さんは、若年層の客に注意する機会が増えた。基本的には店側の注意を受け入れてくれるというが、「食事後もマスクを外したままだったり、アクリル板を脇によけたりして会話するお客さんが目立つ」と話す。

大阪の繁華街にある串カツ店でも、マスクを外したまま近い距離で談笑する客が散見される。「スタッフの募集が追いつかず、お客さんをお断りすることも度々ある」(店員)ほど活況だ。JR天満駅(大阪市)近くの立ち飲み酒場では、パーテーションもない「密」な状況で夕方から杯を交わしている。まるでコロナ禍が収束したかのようなにぎわいぶりだ。
10月に緊急事態宣言が全面的に解除され、全国の繁華街がにぎわいを取り戻しつつある。10月31日夜には、コロナ前のようにハロウィーンで仮装した人たちが東京・渋谷駅周辺に集まった。人混みはコロナ前ほどの水準ではないとはいえ、人々の「日常を取り戻したい」という思いが表れていた。
それにもかかわらず、全国的に感染は縮小傾向のままだ。2021年8月に1日の新規感染者数が5000人を超えたこともある東京都では、10月17日以降、新規感染者数が50人を下回る日が続いている。
「(来店客の感染など)何も問題は起きていない。根拠もなく飲食店をやり玉に挙げて、時短営業や酒類提供の自粛を求めてきたのはおかしいと思う」。7~9月の緊急事態宣言中も感染対策を講じた上で酒類提供を含めた通常営業を続けてきた都内の焼鳥店からはこんな声も上がる。
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