この記事は日経メディカル Onlineにコラム「三浦和裕の『地区医師会感染症担当理事のホンネ(折々グチ)』」として6月23日に配信したものを、日経ビジネス電子版に転載しています。

 各自治体で個別接種が本格的に始まろうとしている。各クリニックで接種に向けた準備が行われている。予約をどうするのか?ワクチンの搬入は?実際の運用、接種後の経過観察は?など決めなくてはいけないことが多く、接種に名乗りを挙げても、市区町村から条件を満たさないと再検討を指示されるクリニックも少なくない。

 そんな中、アナフィラキシーショックに対応するため接種会場に備えるアドレナリンのボスミンが市場から消えかけている。ワクチン接種が開始された当初から、注射針一体型の注射器にアドレナリンがあらかじめ充填されたエピペンは世界的に市場から消えた。そのため、国でボスミンやエピペンを管理し、食物アレルギーなので絶対に必要な患者使用分を差し引いた上で、各自治体に配給されると言われていたが、いまだに配布品は回ってこない。ちなみにエピペンの処方はE-Learningを行った医師のみ可能だが、会場に設置されているエピペンに関しては処方するわけではないので医師、看護師でなくても使用可能だ。

 個別接種は、かかりつけ患者に接種できるというメリットがある一方で、効率の悪さが指摘されているが、加えて必要な薬剤が分散されることで、それらの供給不足が問題になるというデメリットもありそうだ。

 そういえばプロポフォールも供給不足が指摘されている。プロポフォールは手術麻酔や人工呼吸管理中に使われる。特に小児の呼吸器管理中には今や必要不可欠だ。COVID-19でも人工呼吸器やECMOによる呼吸管理を行う際には患者の鎮静にプロポフォールが多く用いられる。

 厚生労働省や関連学会が、プロポフォールはICUにおける使用を優先し、手術室での使用を極力控えること、手術室では臨床上問題なければ「麻酔の維持は揮発性吸入麻酔薬を考慮する」などの対応を行うことを求めているほど、供給不足は深刻なようだ。

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