小金井メソッドで「一番ピン」を狙う

:いや、それは浮いているんじゃないですか(笑)。浮いているというか、変わっているだろうし。そもそも僕は30歳前の転職組なので。ただ、やっぱり小金井市のありがたいところは、そういう僕でも使おうとしてくれる部分だと思います。かちっとした運用が大事な行政実務の部分はザルで、いろいろ弱かったりするのに。

―― 何かすごく今、親近感を抱いてしまったのですが(笑)。

:そういうのを使おうという文化があるのはありがたいですよね。

―― はい(笑)。

:小金井市はいまだに行財政改革のただ中で、人件費では市民の方からお叱りを受けていますし、あと、周りに強い自治体が多くて。

―― この辺で強いってどこになるんですか。

:例えば武蔵野市、三鷹市、府中市。あと小平市さんにはブリヂストンがあるわけで。

―― ああ、税収が。

:そういう中で比較されると小金井市は市民サービスが低いというご評価を受けてしまうんですね。

―― 小金井市の財源は……。

:ほとんどが住民税です。特に個人住民税の割合が高いです。

―― でもいい住環境ですよね。先にも言いましたが、感染症対策の成果が、自治体としての評価につながることも期待できるのではないですか。

:そうですね。財政力が強い自治体みたいに、「あれもこれもそれも全部」はできませんので、だったらワクチンに集中すべきだ、と。それで、安心して学び、働き、ご商売もできるようになればと思うんですよね。ワクチン接種は小金井市にとっての「一番ピン」なのだと思っています。



 三澤先生の言う「やる気」と、それを支える開業医としてのプライド。フォズベリーの方々が言う「ビジネスチャンスとして捉える」思考と「前向きなオーバーラップ」。それらが、異文化チーム組成は公務員には難事だ、と自覚している自治体のコーディネーターによって、かみ合い、疾走しているのが「小金井メソッド」ということになりそうです。

 もう一つ。せっかくの意欲が「訓練された無能」に向かわないためにも、高い目標、気恥ずかしいですが「志」と言ってもいい……を設定し、それを共有・確認するため仕掛けも重要だと思います。小金井市役所は頻繁に接種数をサイトで掲出していますが、これは「頑張ったことがちゃんと出力・成果に繋がっている」ことを見てもらうためのものでしょう。「V-SYSには集計画面がなく、VRSは地域の接種実績を集計できない。つまり自治体が自分のところの実績を見る仕組みがないので、医師会が協力して手作業で集計しているのです」と聞き、ずっこけました。

 前向きにエネルギーをぶちまける快感は、小さな経験ですが自分も雑誌の創刊などで味わったことがあり、それが「世の人の役に立つ」となれば、間違いなく幸せな仕事だとうらやましくもありますが、ハマると体力の限界を超えて突っ走ってしまいます。どうか皆様、たまにはたっぷり寝てください。

 この連載で伺ってきたお話は、別の機会にインタビューさせていただいた自動車メーカーのエンジニアの方が言われていたことと見事に響き合うので、こちらに引用して、〆にさせていただきます。皆様ご高覧ありがとうございました。超ご多忙の中、話の長いインタビュアーにお付き合いくださった方々、そして、すべてのワクチン接種関係者の皆様に敬意を捧げます。(Y)

「クルマってあれだけいろいろな部品があって。単純に個別目標の達成だけで積み上げたらたぶん限界がくるんですよ。そこを超えようと思ったら、積み上げだけじゃない、命令や説得じゃない、合理性を追求した先にある、自発的な意思から生まれる集合知みたいなものでしょうか、そこを引っ張り出さないと。

 これはクルマ業界に限った話ではないかもしれませんが、我々、たくさんの人間が関わるリアルワールドのものづくりにとって、譲れない最大の付加価値、仕事だと思っています。また、それを作っているのは、やはり「人」であり、「人」と「人」との繋がり、それによって導かれるより大きなパワーの結晶体だと思っています」(マツダ CX-30開発主査 佐賀尚人さん談)

(「愛されるクルマと、「うまい!」と思わせる吹奏楽部の共通点」)より。長い原稿の最後のほうに出てきます。記事の途中にリンクが張れなくてすみません!

この記事はシリーズ「新型コロナと闘う「医療最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。