小金井市が全国屈指の接種実績を上げている理由を関係者に聞いていくこのシリーズ、最後は「小金井メソッド」のハブとなる、市役所の担当者の方にお話を伺っています。(Y)

―― 大きな会場を設けて、そこで自治体の外部から来た専門スタッフが一気に接種を進める、という、当初厚生労働省が描いていたと思われる構図が、大規模病院や接種会場をほとんど持たない小金井市にとっては実現不可能なものだった。

 そこで、地域医師会やイベント運営企業と組んで、診療所を中心とした「小金井メソッド」で接種を進めることになった。しかし、中央官庁の完全な指示に基づいて淡々と執行する、という、市役所のこれまでのお仕事では、なかなか外部の、民間企業の強みを引き出すのは難しい。だからこそこの経験は、地域自治体にとって大きな財産になる。そんなお話を前半では伺いました。

:はい、ただしそうなると医療機関のご負担が大きくなることがとても懸念されました。地域医師会、医療機関の方をはじめ、コールセンターや会場の運営企業さん、そして我々といった、各主体の覚悟がないと、うまくはいかないですね。

小金井市では薬剤師会が全面的に協力して集団接種でのワクチンの希釈作業を行っている。「バイアル(ワクチンの瓶)からシリンジ(注射器)に吸い上げるだけだろう?」と思っていませんか。
写真上から、生理食塩液、生理食塩液を吸ってワクチンのバイアルに入れるためのシリンジ、ファイザー製の新型コロナワクチン(コミナティ)入りバイアル、そこから吸って接種するためのシリンジ(上は話題になった、1バイアルから6人分取れるタイプ)。正しい容量で生理食塩水をバイアルに移して、瓶の蓋に触れないように混ぜ合わせ(転倒混和)、空気を抜いて正しい容量で接種用シリンジ5~6本に分けて吸い上げる。どの作業でも、手順や容量、置き場所を間違えたらワクチンが無駄になってしまう。希釈の手順の動画はこちらこちらなどを。
「コミナティは普通のバイアルよりずっと小さく、扱いが難しい」と多摩中央薬剤師会(小金井・国分寺)の田中智巳会長。このため、薬剤師チームは事前に練習を重ねたそうです。写真左が一般的なバイアル、中央がコミナティ、右は10円玉。

“異業種”連携はどうして可能になったのか

―― 後半は、異分野間の協力体制を築くために堤さんが何を心がけたのかを伺っていきたいと思います。とはいえ、まず、小金井市の医師会ってどうしてあんなに前向きなのでしょう。何か特別な要素があるんですかね。

:僕、小金井市の市民でもあるんです。20年前に、転職して地域のために働こうと決めたので、市内に家を買って住んでいるんですけど、率直に言って、医師会のイメージが変わりました! ちょっと失礼な言い方なんですけど。

―― ぜひ率直にお願いします。

:高いところから、行政に対して「こうすべきだ」とご意見されるのかなと思っていたら、こんなに汗をかき、こんなに勉強して地域のために貢献してくださる。すごいですね。やっぱり熱意ある先生が多いということがまずある。さらに、医師会の理事の先生方の体制が絶妙だと思います。幅広く全体を見ている会長がいて、三澤(多真子)先生のように突っ込んでリスクを取って実行する方がいて。

―― 日本のこういう組織って、年功序列だよねと思っていましたが。

:僕もそう考えていました。ところが、若い方を理事として活躍させて、その脇を経験ある先生方が固めている。そういう運営の判断を前会長がなさり、それをこの6月で交代された現会長・現体制も引き継いでいらっしゃると思います。

―― 三澤先生は、「市役所の方はちゃんと顔が見える」とおっしゃっていましたが。

続きを読む 2/5 ルールに縛られている間、ワクチンは冷凍庫で眠ってる……

この記事はシリーズ「新型コロナと闘う「医療最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。