人口に対する医療機関や医療関係者のリソースが決して恵まれているわけではない東京・小金井市。前に載せたデータを再掲すると、人口約12万3000人。大規模な病院はなく、中小規模の病院でワクチン接種に対応できるところが5カ所。一般診療所合計対人口比でほぼ全国平均並み、医師数では10万人当たりで133.45人と全国平均の244.11人を大きく下回る(データは「地域医療情報システム」から。医師数の数字は2015年のもの)。

 その小金井市が全国屈指の接種実績を上げている理由を関係者に聞いていくこのシリーズ、最後は「小金井メソッド」のハブとなる、市役所の担当者の方にお話を伺います。(Y)

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小金井市役所職員のべ300人が週末返上で一般向け接種券郵送のため集中作業。6月14日水曜日に16歳から64歳までの全市民への発送が完了した。

―― はじめまして、よろしくお願いします。

堤 直規・小金井市役所福祉保健部副参事・新型コロナウイルス感染症対策担当(以下、堤)さん:はい、どうぞよろしくお願いいたします。

―― 小金井市の新型コロナワクチン接種が順調に進んでいる理由として、まず地域医師会の極めて前向きな姿勢があるわけですよね。6月中旬で高齢者の7割(約2万人)が第1回の接種を、4割弱(約1万人)が2回目の接種を完了、その8割が指定医療機関(かかりつけ医等)で接種を受け、集団接種会場でも、運営を行う企業との二人三脚が奏功してとてもうまく進んでいる、と。

:はい、おかげさまで順調にワクチン接種を進めることができています。小金井市では、一般向け接種券(16歳から64歳)は6月14日に郵送しました。基礎疾患等がある方について6月24日に予約を受け付けて7月1日から接種してまいりますが、一部医療機関では基礎疾患がある方等の早期に接種が必要と判断される方への先行接種を始めています。

 また、7月上旬にはモデルナ製ワクチンの供給を受けて大規模接種に取り組みます。

―― このうえ、大規模接種も開始するんですか。

:そうです。あとでお話ししますが、小金井市には大規模接種に向いた場所が無かったのです。しかし、市民の皆様が訪れやすく、広さも確保できる会場がようやく見つかり、スケジュールを押さえることができました。医療機関と大規模接種の二本立てで、8月末には16歳から64歳の方の約5割が2回の接種を受けられることを目指して、取り組んでいるところです。

―― 会場が見つかったことが、大規模接種にも踏み切った理由ですか?

:元々の理由はワクチンが不足することが分かったためです。

―― と言いますと。

:5月中旬の時点で、本市での高齢者向け接種は順調に進んでおりまして、6月下旬には高齢者向け接種に目途が立ち一般向けの接種に移行できることが見えてきていました。でもそうなると、せっかく接種できる体制なのにワクチンが足りない。

―― なるほど。打ち手はいるのにファイザー製ワクチンの供給が追いつかない。

ワクチン接種は介護保険導入以来の大仕事

:はい。東京都や厚生労働省にご相談して対応策を模索する中で、「大規模接種に取り組むことでモデルナ社製ワクチンの供給を受けることで、状況を打開しよう」と考えたのです。

―― 言い換えますと、大規模接種会場を設けることができれば、モデルナのワクチンが供給される、ということですね。それにしても打つ手が速いですね。この対応速度はどこからくるのでしょう。ばっくりとした質問で恐縮ですが、市役所の方にとって、今回の「住民への新型コロナワクチン接種」というのは、お仕事としてどうなんでしょう。異例のビッグイベントなのか、あるいは、類似した先行例のあるものなのか。

:東日本大震災などの天変地異を例外としますと、おそらく、日本の自治体にとっても地域にとっても、こんな出来事は無かったと言っていいくらい大きなものだと思います。

―― なるほど、日本全国、ほぼ全国民が関わることになるものですからね。

:僕は2001年に転職して(小金井市役所に)入ったんですけど、自治体の職員にとってという意味では、これまでで一番似ているのは介護かもしれません。

―― えっ、介護ですか。

続きを読む 2/4 自治体の仕事は基本的に「執行」だった

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