この記事は⽇経メディカル Onlineにコラム「三和護が迫る『COVID-19の核心』」として6⽉21⽇に配信したものを⽇経ビジネス電⼦版に転載しています。
日本でも、インドで初めて確認された新型コロナウイルスのデルタ株(B.1.617.2系統)の検出例が増えてきた。空港検疫での検出例は2021年6月18日時点で228例となり、国立感染症研究所のゲノム解析によって把握された国内検出例は6月14日時点で117例となった。国内検出は12都府県に広がり、東京都が30例と最も多くなっている。従来株より1.78倍も感染しやすいとされるデルタ株。その性状はどこまで明らかになったのか──。
デルタ株、国内検出例は117例に
まず、国内のデルタ株検出例の動向を確認しておきたい。図1は、到着日で見た空港検疫で確認されたデルタ株検出例の推移だ。到着月ごとに振り返ると、3月に6例だったが、4月に90例と跳ね上がり、5月には122例とさらに増加。6月は6日までで10例と検出例が続いている(6月18日時点)。ゴールデンウイークにピークを迎えているが、日本政府がデルタ株に対する水際対策に乗り出したのはピーク後の5月10日だった。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の潜伏期間を考えると、デルタ株に対する水際対策が稼働する前に、検疫での検査で把握できなかったデルタ株が国内に侵入した可能性は否定できない。
一方の国内でのデルタ株検出例を見ると、ゲノム解析で把握されたデルタ株検出例(累計)は、5月18日に8例だったものが、5月24日に29例、5月31日53例、6月7日87例、6月14日には117例と増え続けている(図2)。確認された地域も12都府県に広がっており、東京都の30例を筆頭に神奈川県や千葉県など首都圏での増加が目立つ。
その東京都は、昨年12月に「新型コロナウイルスのゲノム解析に関する検討チーム」を立ち上げ、変異株のスクリーニング検査を進めている。それによると、5月31日から6月6日の1週間に38件の検体を検査しているが、31.6%がデルタ株系統だった。それまでは一桁台で推移していたことから、この数字は「異常」な多さだ。翌週の6月7~13日も24.3%と多くなっており、都内でデルタ株の感染例が広がりつつあることをうかがわせる(図3)。
6月9日に開催された厚生労働省の第38回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード会議で、京都大の西浦博氏らは、デルタ株の再生産数は変異を持たない株より約1.78倍高いという予測結果を示した。アルファ株(英国型)と比べると約1.23倍高い。このため、7月中旬にはデルタ株が流行株の半数を超えると予想される、としている。
あと1カ月に迫った東京五輪は、デルタ株の拡散が予測される中で開幕を迎えることになる。デルタ株の動向には、今まで以上に細心の注意を払わなければならない。
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