パーティション一つで安全性(と予算)は変わってくる
―― その方の決めセリフなのかもしれませんが、ちょっと泣けてきますね。民間でもなかなかそうは言えないでしょう。でも、会場に必要なものってある程度決まっているんじゃないでしょうか。やり方でそんなに変わります?
桑原:ひとつは人員、これはもろに変わります。あとは、そうですね、ちょっとマニアックな話になりますけど、さっきお話しした仕切り、パーティションがあるじゃないですか。あれにはいろいろなタイプがあります。自立するもの、しないもの。自立するタイプの中にもいくつか分かれていて、これくらいの薄い円盤みたいなのが下にベースとしてあるものと、太い脚がにゅんと出ているものがあって、全然コストが違うんです。ベースが薄くなっているものが、一番安全ですがコストが高いんです。ですけど、当初会場にやってくる方が、基本的に高齢者だということを考えると。
―― 引っ掛からないものを選ぶ方がいい。
桑原:はい。理想を言えば。ただ、設置には少し専門的な技術が必要なので、臨時の会場には向いていないこともある。
その場合、置くだけで設置が完了する、脚が出ているタイプなどを使うことになるのですが、そのときには転倒を防止するために人員を増やしてケアすることになる。
―― よくキャスターが付いている三つ折りのパーテーションとかがありますよね。
桑原:あれそのものを全面的に否定するわけじゃないですけど、その周りに十分に人がいないように見える会場を見ていると、ちょっと怖いと思います。岡田さん、ちょっと僕が喋りすぎたけど何かないですか。
岡田:ありがとうございます(笑)。私が感じるのはただ、三澤先生は本当に一つ一つ細かく「物事を作っていただく」方だなあ、と。
―― そうなんですか。ディティールを積み上げていく、ということですね。
岡田:運営フローもそうですし、医師、看護師、市、我々、誰に対してもどこにおいても真っすぐに、物事を一個一個解決してくださると。すごく真っすぐ、この集団接種に関して取り組んでいただいているという印象があります。
―― えーと、私、三澤先生にはすごく突破力を感じるので、目標に全速力で突進していくタイプの方かなと思ったんですけど、そうでもないんですか。
岡田:私は、やり方が非常に繊細だと感じています。
桑原:目の前にある問題を解消しないまま「とりあえず」で進むことを、本当に嫌う方なのだな、とは思いますね。中ぶらりんになって、ディスカッションの間にふわっと浮いてしまった議題について、ご自身で調べて、「こうでした」ということを回覧していただくことがよくあるんです。「あの後考えたんですけど、こういうふうにした方がいいと思うんです。どう思われますか」というメールが「先生、寝てください」というような時間にも届きます。本当に、お体は大事にしていただきたいです。
―― そういう意味では、意思疎通の密度も高いんですか。
桑原:密度もありますが、全幅の信頼を置いていただいているので、お互いにうそがない状態でのコミュニケーションを常に取っているんです。そこが大きい。それこそ、できること、できないことをはっきりと言うのは今でも一貫していて。
―― すでに集団接種が始まっていますが、やっぱりやってみないと分からないなということってありますか。
岡田:細かな点ではたくさんあるんですけれども、現状だと、思っていたよりちゃんと対応できるので、想定していたより接種する人数を増やしていきたいと。
そして、我々も100%慈善事業というわけではないので、「この数字を超えてしまうと、人を増やさなきゃいけないかもしれない」という話はあるわけです。
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