―― そうか、オペレーションに問題が内在しているのか、そうじゃないことをしたからなのかというのが峻別(しゅんべつ)できるわけですね。

桑原:はい。

―― なるほど。大事だわ。

桑原:これはどのイベントでもやらせていただいている作業なんですけれど、手順を順守することは、しゃくし定規に見えることもありますが、トラブルの際の原因究明と再発防止にも必要なんです。

―― ワクチンを希釈する生理食塩水を注射してしまった(※人体にはもちろん無害)というトラブルが、一時他の自治体で発生していましたね。

桑原:はい、もちろん薬剤を希釈して接種するまでのオペレーションは、長年の実績を経て、非常に洗練されているものです。ただ、接種会場では、普段の診察室ではない臨時の場所、臨時の動線で行われるので、独自のオペレーションというか、いつもの手順に“つなぎ”の部分が加わるんですよね。そこを、会場を運営する我々が丁寧に作り込むことで、トラブルを防ぐことに寄与できるのではないかと思います。

―― それこそ、ワクチンの空き瓶(バイアル)をどこに置くか、みたいな会場のオペレーションがちゃんと明文化、共有されていないと、空き瓶に希釈用の生理食塩水を入れちゃって、そこから接種用の注射器に吸ってしまう、ということに。

桑原:だと思います。

―― そうか、でも、そこをどうするかについては、厚労省からの手引にも指示はない。だから、現場で運営する側が工夫する必要があるわけか。

西:話が長くなりましたが、というわけで、医師会の方が、接種現場の医療関係の意思統一を積極的にしてくださることがとても重要なんです。これがうまくいかないところは、我々も怖くて責任が持てないので、「手を引く」という選択肢も含めてかなり緊張して対応することになります。

―― 医療関係の意思統一が現場のトラブルのない運営の極めて大きな条件で、接種現場を預かる立場としては、そこのリーダーシップを医師会に期待する、ということですか。

西:はい、ここをビシッとやっていただけることはとても大きいですね。

桑原:大きいです。小金井市は、医療従事者の方のコンセンサスが取れているというところは本当に助かっていますね。

「予算に関しては任せます」

―― 市役所のほうはいかがですか。クライアントだけに言いにくいこともあるかとは思いますが。

西:聞いている話だと、小金井市さんがうちの担当者の裁量に任せてくれたというのは大きいようです。

桑原:そうですね。本当にそうですね。

―― 任せてもらえた、と感じたことで、何かご記憶に残っているものがあればぜひ。

桑原:具体的なエピソードですか。すごく直接的な物言いになっちゃうんですけど……。

―― なんでしょう。

桑原:僕、行政の方とこの仕事をやっていて、「予算に関しては任せます」という言い方を、初めて聞いたんです。

―― へえ、事実ならば確かに衝撃的かもですね。

桑原:投げやりな言い方ではもちろんなくて、「その金額になるのには根拠がおありでしょうから、そこはある程度お任せします。本当に上限に達してしまってというときにだけ言います」と。

―― 予算感を忖度(そんたく)して、取らなくていいリスクを取るようなことはしてほしくない、ってことですかね。

桑原:はい。「何よりも本当にうまくいくことを第一にして考えてほしい」ということでした。

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