6月10日時点で高齢者の69%(1万8133人)が新型コロナワクチン接種を終え、2回目の接種率も2割を超えている東京・小金井市。地元の医療関係者が、かかりつけの診療所でも集団接種会場でもその中核を担う「小金井メソッド」について関係者に聞いていくこのインタビュー、第3回、第4回では、集団接種会場の運営を担当する会社、フォズベリーの方に、医師会、市役所と民間企業がどのようにチームを組んでいくのかを伺っています。
集団接種会場でも高効率かつスムーズに接種を進めている小金井市のノウハウは、最近一気に話題になっている「職域接種」でも活かせるところがありそうです。そこでインタビューの後に、同社の方に「集団接種会場運営時に役立ちそうなノウハウ」をお聞きしました。最後のページ(記事内でページを飛ばすリンクが作れず、申しわけございません)にまとめましたので、ご活用ください。(Y)
- その1→「町のお医者さんフル稼働、ワクチン接種『小金井メソッド』」
- その2→「ワクチン接種、全力で攻めてこそ医者も市民も救われる」
- その3→「ワクチン接種を「機会」と捉えたイベント会社がやったこと」(※前回から読む方はこちらから)

市役所、医師会と運営会社がフラットに手を組む
―― 前回に引き続き、新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場(以下、特記なき限りワクチンは新型コロナウイルスワクチンを指します)の運営を担当されているfosbury(フォズベリー)の方にお話を伺っています。医師会の方とは前向きなオーバーラップをお互いにできているとのことですが、市役所の方とはどうですか。
桑原裕部長(以下、桑原):市役所の方は、「役割としてはハブなので、必要な情報を適宜提供し、調整する」というスタンスを取ってくださって、実はこれもすごくありがたかった。本当にハブに徹してくださって、過剰なオーバーラップはしない。「こういう案件が出ました。運営サイドからはどう思われますか。医師会サイドはどう思われますか」というふうに、物事を円滑に進めるためのファシリテートをしてくれていると思います。あとは、市長がこの1週間実はずっと現場に実際に出てきていて、気になるところをご指摘いただくとか。
―― でも偉い人の指摘なんてどうせ大したことないでしょう。
桑原:いや、それが結構的を射ていて。
―― 本当ですか(笑)。
桑原:よくある偉い人に取り巻きの方がぞろぞろ連れ立って、という感じじゃなくて、2人ぐらいで来られて、「ここってちょっと気になるんですけど、どういうふうなお考えでこうされているんでしょうか」って、質問をされるんですね。それで議論があって、そういうことなんですねといって納得してお帰りになる。
―― あら、すてき。
桑原:フラットに本音でお話ができていると思います。
―― 医師会の方とは、桑原さん、岡田さんから見ていかがですか。
桑原:医師会の方々は、本当に、会場に置いてあるもの1個1個について、ちゃんと言及してくださるんです。「オペレーションの順番はこっちのほうがいいんじゃないか」「スタッフの立ち位置は、こうしたほうがやりやすい」という要望をストレートに言ってくださって。もちろん、可能なこと、不可能なことがありますので、「これはできる」「これはできないけれど、こういうやり方なら対応可能」といった、直接的なコミュニケーションが取れているのは、うまくいっている要因かなと思います。
岡田がずっと話し合いを進めてきて、初めて僕も小金井市に伺ったときなんですが、実際の会場を使って簡単なシミュレーションをしましょうというところに呼ばれて三澤(多真子)先生(その1、その2を参照)と初めてお会いしたんですけど、終わった後のディスカッションをしている最中、「こうしたほうがいいと思います」と僕が発言したところ、「あ、それいいですね」と。
―― 打ったら響いたと。
桑原:「もうプロがそう言うなら、じゃあ、お任せします。ありがとうございます」と言われて、僕としてはもう、最初からびっくりだったんですよ。
―― 具体的な例では?
桑原:「観察30分と診断された人の体に直接シールを貼って目立つようにする」というアイデアをぱっと採用してくださいましたね。大きなものとしては、会場のレイアウトの大幅な変更、具体的に言うと会場の順路を当初と逆回転にしたことがあります。
―― どういうことでしょう。
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