「教えてください」ではなく「これで合っていますか」

岡田:できること、できないことを明確に言っていいと言われたので、正直に、「できること」は強くお伝えして。そうしたら、すぐ翌日に電話があって、その次の日に、小金井市でやるシミュレーションにすぐ同席してくれという話があって。たぶんそこが本当にきっかけの、軌道に乗ったポイントだったのではないかと。

 おそらく営業ワードで売り込みができる会社さんはいくつかあったんですが、桑原が本当に知識として蓄えたものや、会社として蓄積してきた「ワクチン接種」に関する知識・ハウツーを分けてもらえたので、できる、できないの「できる」に関しては本当に細かく説明ができました。たぶんそこでぐっと興味を持ってもらえたんじゃないかと思います。

―― 具体的には何か「ここでピンと来てもらえた」ことはありますか。

岡田:そうですね……、専門資料を読んでないと出てこない単語やルールが、何も説明がなくても理解できたことはあるのではと思います。

桑原:勉強の成果ですね。

岡田:「バイアル」「mRNA」という医療の専門用語自体、1月時点では初見でしたし、ワクチンの輸送方法、温度管理といったことももしかしたら我々が担うのかもしれない。厚労省の手引だけを見ても、何が我々にとって必要な情報なのか示されていないので、いっこいっこ調べて、意味を知って、「なるほどこれは必要で、これは我々の領分じゃない」と初めて分かる。ファイザーのワクチンであれば、解凍してからの使用期限などは、ダイレクトに運営に響いてきます。単純な例では「バイアルの倍数によって会場の接種能力を組み立てよう」ということになります。

―― その時点で、こうした知識を持っていた運営会社は少なかったんではないか、ということですね。

岡田:それはなんとも言えませんが、選んでいただけたのは事実ではあります。

桑原:小金井市さんへの最初の提案の資料がこれです。

フォズベリーの営業資料「コロナワクチン接種を行う特設会場に関するご提案」より
フォズベリーの営業資料「コロナワクチン接種を行う特設会場に関するご提案」より
[画像のクリックで拡大表示]

―― うわ細かい。

桑原:はい。「接種会場で必要になってくるのはこういうところですよね」「たぶんこういう座組で進みますよね」というところ。なので「こういうふうにプロジェクト全体としては進みます、だいたい仕様書を読むとこんな感じなんですけど、合っていますよね」と確認して、1時間でどれくらい回せるのかというシミュレーションを説明し、あとは人員体制で、これぐらい必要になりますというところも含めてご提案をさせていただきました。

岡田:これが、おそらく、手前みそですけど、最初の段階でこの密度でご提案ができたというのはうちだけだったんじゃないかなというのと、さっき桑原が申し上げましたが、会場で必要になってくるであろうものを、施工の昭栄美術さんと一緒になってやらせていただける、というところ。良かったとしたら、この2つではないかと。

桑原:シミュレーションを経て信頼していただいて、「小金井市のワクチン接種を、1日でも早く終わらせる」ことが共通目標だよね、と、医師会、市役所の方と改めて確認しました。

 そのためには、運営計画、施工計画から、最終的な人員手配……今日も小金井市で動いているスタッフたちがたくさんいるんですけど、もう全て、医療関係者以外は本当の意味のワンストップで、運営から人員手配まで我々がやらせていただく。なぜかというと、問題が起きたら時差をつくらずリアルタイムに集約して、すぐオペレーションに反映することが必要だと考えたからです。できることは全部やる。そのために必要なことも全部やる、と。

―― あまり責任を分割しないで、ワンストップでやるのが望ましい?

桑原:そう思います。

―― なるほど。医師会の方とは前向きなオーバーラップをお互いにできているとのことですが、市役所の人とはどうですか。

(その4に続きます)

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

春割実施中

この記事はシリーズ「新型コロナと闘う「医療最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。