ポピュリズムに支配されがちな自治体の意思決定

 そして恐らく、既に医療者が直面しているのが、COVID-19患者内での選択の問題である。

 大阪府庁でCOVID-19患者の入院調整などを担う医療監(医師)が、病床逼迫を理由に高齢患者について「当面の方針として、少ない病床を有効に利用するためにも年齢が高い方につきましては入院の優先順位を下げざるを得ないことをご了承いただければ幸いです。特に高齢者施設に入所中の方でDNARの方につきましては、看取りを含めて対応をご検討いただきたく存じます」とするメールを、府内全18の保健所長らに送っていた件が報道されている(日経新聞2021年4月30日、読売新聞オンライン2021年4月30日)。

 府は「不正確な表現だ」として内容を撤回し、医療監を厳重注意したようだが、DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)の高齢者をCOVID-19だからといってわざわざ搬送して救急外来の医療従事者に感染リスクを負わせることは慎むべきであり、妥当な意見であろう。これを府の通達として出さず、医療監が私信的なメールとして出さざるを得なかったところに問題の根源があるのではないだろうか。「高齢者を見殺しにするのか」的な情緒的な反論を記載している報道もあったが、事態を甘く見過ぎていると言わざるを得ない。

 繰り返すが、このような内容の通達は府から正式に出されてしかるべきである。しかし選挙による支持のみを基盤とする知事に加え、大阪府では衛生部長(大阪府では健康医療部長)を事務官が担当しており、どうしてもポピュリズムに支配された非科学的な意思決定にならざるを得ないのが現状なのである。大阪府の新型コロナウイルス対策本部には医師はオブザーバーにいるだけで、部員としては入っていない。これではまともな議論にならず、感染制御できないのもやむを得ないのではないか。

 いい加減、選挙がある都道府県知事や、医学知識もなく医療現場もろくに知らない事務方に指揮を取らせるのはやめて、医師資格のある人間を知事の代わりにトップにして動かさないと回らないだろう。国としても、COVID-19の担当大臣として医師資格のある議員か、厚労省や民間から抜てきした人間を据えて対応させるべきではないかと思う。

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