この記事は⽇経メディカル Onlineにコラム「弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』」として5⽉13⽇に配信したものを再編集のうえ、⽇経ビジネス電⼦版に転載しています。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株による影響なのか、それとも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第3波のときに安易に緊急事態宣言を解除したからなのかは議論があるが、大阪府などを中心に医療崩壊が現実に起こっている。その結果、この第4波における4都府県での緊急事態宣言が大幅に延長された。
大阪大学医学部附属病院では、大阪府の要請で集中治療室(ICU)の全ベッドをCOVID-19患者用に使用している。これは大阪大病院では大きな手術を行えず、急性心筋梗塞(AMI)なども診ることができないということである。

府知事の要請ということは、大阪府はCOVID-19の対策を強化するために他の疾病で助かる命を見殺しにするリスクを受け入れたということであろう。大阪だけに限らないが、自治体の首長はコロナ対策やその結果としての患者数が有権者の最大の関心事だと考えているのか、他の患者を押しのけてでも入院病床を増やせばよいという考えに陥りがちである。よく、「医療と経済とのバランシングがどうのこうの」という議論があるが、現在の医療の状況を見る限り、経済もそうだが「COVID-19と他の疾病とのバランス」を真剣に考えるべき段階に入っていると言えよう。
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