その1から読む)

―― 伺いにくいことですけれど、経済誌なのでお聞きします。新型コロナの検査とかワクチン接種をやるということって、診療所の経営面としてはどうなんですか。

医療法人社団公懌会理事長兼小金井メディカルクリニック院長・小金井市医師会新型コロナワクチン担当理事の三澤多真子先生
医療法人社団公懌会理事長兼小金井メディカルクリニック院長・小金井市医師会新型コロナワクチン担当理事の三澤多真子先生

三澤多真子先生(以下、三澤):それはもちろんやった方がいいです。きちんと報酬は出ますから。ただ、今回の新型コロナ、ワクチンではなくて新型コロナパンデミックに関して言うと、当院も昨年の4月、5月は多くの患者さんが受診控えなさって経営的にはとても大変でした。そのころはまだ発熱外来もできませんでしたし。

―― 売り上げ4割減とか。

三澤:まあそんなところですね。

―― 新型コロナにどう対応したらいいのか分からない状況だったわけですからね……。

三澤:はい。例えばゾーニングをどうしたらいいのかとかですね。パーテーションをつけたり、PPE(個人用防護具)を準備したり。準備がたくさん必要でした。専門の先生に確認してもらったりもしました。PPEも当初は入手困難で大変でした。

―― お金がかかりそうな話です。

三澤:しかもあの当時は、病院内で新型コロナに感染した職員や患者さんが出ると、保健所が入ってしばらく閉鎖、みたいな状況があったんですよ。

―― そうでした、そうでした。

三澤:もしそんなことになったら潰れるかもしれないと思いました。風評被害がすごかったですし。

潰れるかもしれない、患者さんの役にも立てない……

―― ああ、そうですよね。

三澤:当時はそもそも新型コロナウイルスについてよく分かっていなかったので、感染への恐怖感と経営の先行きへの不安、一方で「内科医が発熱患者を診なくてどうするんだ」という思い、でも、どう感染対策を整えたらいいのか分からないという焦り、いろいろな思いが押し寄せて非常につらい時もありました。このままでは保健所や基幹病院がもたないという危機感と、「自分が役に立てていない」というもどかしさもあって。通勤の途中、歩いていて自然に涙が出てくることもありました。

―― ごもっともです。

三澤:そんな私の心の頼りの綱は、、峰宗太郎先生のツイートだったんです。

―― あっ、そうだったんですね。

三澤:直接お会いしたことはないんですけど、峰先生のツイートを見て、ウイルスについての知識を教えていただいたり、「ああ、そうなんだ、過剰に怖がらずに基本対策を徹底すればいいのか」「信頼できる情報はここを見ればいいんだ」など知ったりすることができて、とても助かりましたし、心強い思いがしました。先生のマシュマロに癒やされている方は多いですよね(笑)。

 敵(ウイルス)の性質を勉強しながら、実践面では、軽症者療養ホテルや周辺の市の医師会が合同で作ったPCRセンターに率先して執務し、ここはこうやるんだと一つ一つ学び、マニュアルを作って医師会員に共有しました。それと同時に、自院の発熱診療体制も整えていきました。冬には必ず次の波がくると考え、抗原やPCRの検体を採取する検体採取室を自分で設計して業者さんにつくっていただき、昨年6月末に完成しました。

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