<前編から読む>
ほぼ⽇の⽷井重⾥社⻑と、同氏を人生の師と仰ぎ、「お客様の心に向き合う」をテーマにマーケターとして活動中のかげこうじ事務所(東京・新宿)代表の鹿毛康司氏による対談では、ヒット商品を生み出すようなアイデアが集まりやすい組織について議論が及んだ。
糸井氏が考えるヒット商品を生み出すようなアイデアが集まる組織とは、「いいこと考えた!」が気軽に⾔える組織だという。『「心」が分かるとモノが売れる』の著者である鹿毛氏も、毎⽇、はやりそうなものを参加者が投稿する「なにやら流⾏るこんなもの(NHK)」というメーリングリストを社内で運用していた経験があるという。アイデアが集まりやすい組織とは、どんな組織なのだろうか。
鹿毛康司(以下、鹿毛) 以前、元ソニーの大曽根(幸三氏、初代ウォークマンの開発者)さんにお話を伺ったときに「ウォークマンを作ったのは客が喜んで、自分も欲しい。だから作った」とおっしゃっていました。糸井さんの考えは、そうした大曽根さんの考えと共通しています。それがヒット商品を生み出す神髄だと感じました。ほぼ日では「飛鳥時代の人も喜ぶか」も企画を進める1つの基準だと聞きます。
糸井重里氏(以下、糸井) 人は変わるということを言われすぎていると思います。何かの登場で社会が変わるということはあくまでポジショントークにすぎません。ぼくもそういったことを言ってしまうことがあるかもしれませんが、そう言ったり、書いたりした人もその通りに生きてはいません。カルチャー誌で特集されているようなレストランで、担当した編集者が女の子とご飯を食べているとは限らないのと同じです。人の心は時代が変わっても、それほど変化はしません。だから飛鳥時代の人も喜ぶかどうかを1つの基準にしています。
鹿毛 自分と顧客の双方が楽しむことを生み出す力が「クリエイティブ」になるのでしょうか。
糸井 そうかと言われれば、そのままそうだとは言えません。クリエイティブを日本語にすると、ぼくは「あ!いいこと考えた!」だと思っています。これは子供でも言うことですが、それがクリエイティブ。
いいことを考えない会議や物事は社会に多い。決まりごとがあって、こうすべきだろうと、まるで天気予報士のように物事を決定していく。ですが、そうではなくて、「いいことを考えた!」「言ってごらん?」「あー違った」と笑いながら話す。そうして、鮭の卵みたいにたくさん生み出さないと優れたアイデアは生まれません。いいこと考えた!はろくでもないことを含めて考える。その中から、優れたアイデアが生まれる。
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