あえて自分と遠い存在の人に接する

安倍:では、ここからは視聴者の質問に答えていただく質問タイムに移ります。

 管理職層には、いまだにサイエンス偏重が多数派です。そのような人と付き合う上で、工夫すべきことや意識した方がよいことはありますか。

榊氏:顧客の肌感覚をベースに話さない相手に対してなら、僕は「例えばこういうお客さんがいるじゃないですか」と投げかけますね。「鳥の目」と「虫の目」というのがありますが、データは鳥の目に近い。俯瞰(ふかん)して乾いた情報を見るという感じです。虫の目で「お客さんはこういう動きをしている」という事実をベースに話を組み立てることが必要でしょう。

小林氏:経営者がサイエンスに寄ること自体は、やむを得ない部分はあります。資金調達が必要だったり、上場していたらサイエンスをベースにした説明責任もあったりしますから。そういう人を説得するときには、やはりサイエンス的に意味があることを理解してもらわなくてはいけません。例えば、「クリエーティブを重視してきた会社のほうが、最終的に時価総額は上がる」というエビデンスを、無理やりにでも持ってくるといったことです。サイエンスにひも付けて提案するというのが1つのポイントではないかと思います。

 サイエンスとアートのスキルを伸ばすために日々取り組んでいることはありますか。

小林氏:サイエンスのスキルに関してはMBA的な勉強をすることでしょうか。アートは『武器になる哲学』(山口周著)のような分かりやすいものから入り、深めていっています。もう1つは、誰かと一緒に美術館に行き、「どう感じたか」を議論しています。ポーラ・オルビスグループはポーラ美術館を持ち、アート研修をしています。サイエンスと違い、アートには正解がありません。誰でも発言がしやすく、人によってはめちゃくちゃ面白い視点を出してきます。ビジネスをしているだけでは知リ得なかった、その人の本質的な一面に気づくことができます。

榊氏:サイエンスについては、日々、事業の状況をデータで確認しています。色々なインサイトが出てきます。アートについては、とにかくお客さんとリアルに触れることですね。オイシックス・ラ・大地社長の高島宏平さんは、毎月1回、お客さんの家に行っているそうです。冷蔵庫をバンと開けて、「なぜオイシックスの卵を買わないのか」「この牛乳はどこで買ったのか」といったことを聞くそうです。僕もお客さんに月に1回ぐらい会って、「どのサイトで予約しているのか」「なぜその時こういう行動を取ったのか」とヒアリングして、ユーザー感覚を肌に取り込む練習をしています。

 お2人は今、どのような場所、媒体でアートに触れ、吸収していますか。

小林氏:触れようと心がけているのは、いわゆるアート作品だけではありません。自分と離れた人、つまり化粧品やEコマース業界ではない、経営者ではない、もっと本当に離れた、例えばシェフなどと接することを意識しています。発想から何から全く違うので、最初は話が合わない部分もあるのですが、突き詰めていくと実は根底では話が合うといったことがあります。

榊氏:感性を磨くという観点で、僕は宿に行きますね。実は先週、京都からバスで2時間ほどかけて150年続く美山荘という宿に行きました。数寄屋造りでわびさびの趣のある宿です。帰りには岐阜に寄ってご飯を食べ、そこのシェフと話して帰ってきました。日常と全く違う空間に触れることを、感性を磨く時間として大切にしています。気持ちもすっきりします。

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