思い通りにならないキャリアも結構楽しい

榊氏:日本には、世界に誇れる上質な宿やレストランが数多くあります。一休は「こころに贅沢(ぜいたく)させよう」をミッションに、こうした宿やレストランの予約・販売を通じて贅沢な時間を世に増やすことを目指しています。

<span class="fontBold">榊 淳氏</span><br />一休代表取締役社長<br />1972年生まれ、熊本県出身。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。米スタンフォード大学大学院修士課程修了。2001年ボストン・コンサルティング・グループ入社。09年からアリックスパートナーズ。13年一休に入社。副社長COO(最高執行責任者)を経て、16年2月から現職。21年4月からヤフー執行役員トラベル統括本部長を兼務。
榊 淳氏
一休代表取締役社長
1972年生まれ、熊本県出身。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。米スタンフォード大学大学院修士課程修了。2001年ボストン・コンサルティング・グループ入社。09年からアリックスパートナーズ。13年一休に入社。副社長COO(最高執行責任者)を経て、16年2月から現職。21年4月からヤフー執行役員トラベル統括本部長を兼務。

 我々の会社が頑張れば素晴らしい宿、素晴らしいレストランの部屋や席が埋まります。お客さんにも楽しい時間を過ごしていただけます。誰もが喜ぶ状況をつくることに貢献できる、とても幸福でやりがいのある仕事です。

 私は大学院を卒業後、銀行に勤めてトレーディング業務を担当しました。その後、米国のスタンフォード大学に留学し、コンピューターサイエンスを学びました。帰国後は、経営コンサルティングの仕事に就きます。コンサルティング会社での、最後のお客様が一休です。その後、当時は業績が芳しくなかった一休に加わり、8年前から経営に携わっています。

 こうした私のキャリアから、「やっておいてよかった」と思うこと、「やっておけばよかった」と思うことを5つずつ共有したいと思います。
 まずはやっておいてよかったことです。

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1)好きなことを仕事にする
 私は子供の頃から数字が大好きでした。数字やデータを使った仕事がしたいと考え、銀行のトレーディング業務を皮切りに、一貫してデータにつながりのある仕事をしてきました。今も好きな仕事ができているのは非常にうれしいことです。会社では「榊さんはいつも楽しそうに仕事をしている」と言われ、妻からは「あなたは公園に遊びに行くように会社に行くね」と言われます。

2)サイエンスとアートを両方大事にする
 データ分析に力を注ぐ一方で、お客さんのヒアリングをしたり、実際に会って一緒にご飯を食べたりして、ウエットな情報も収集しています。データというドライな情報の正否を、ウエットな情報で答え合わせしている感覚です。このようにサイエンスとアートの両方を大事にしています。

3)身近なすごい人の影響を受ける
 銀行時代には、世界中の人と情報交換をしながら業務を手掛けたり、22歳で博士課程まで修了した経歴を持っていたりという真のエリートが身近にいて、ものすごく影響を受けました。そんなすごい人たちであっても、一緒に仕事をしていると、「自分も頑張ったら近くまでいけるかもしれない」と思わせられます。今も、一休にはすごい人たちがたくさんいて、その影響を受け、僕自身も常に学んでいます。

4)「思い通りにならない」を楽しむ
 私は「世界最高のトレーダーになろう」と思ってコンピューターサイエンスを学んだものの、投資銀行には採用してもらえませんでした。たまたま拾ってもらったのがボストン・コンサルティング・グループ(BCG)で、「コンサルティングも面白そうだ」と思い、働き始めました。そして今は企業の経営者です。当初、目指したトレーダーとは全く違うことをやっていますが、それも結構楽しいことなのではと思っています。

5)過去を振り返らない
 大学で研究した最先端のコンピューターサイエンスを全く活用できないBCGに入社した時、それを「もったいない」などと過去を振り返らなかったのが、よかったと思います。その後、たまたま巡り合った一休はEコマースの会社で、勉強したプログラミングやデータベースの知識を活用できました。これこそ、スティーブ・ジョブズの名言である「Connecting the dots」(点と点とをつなげる)で、過去の出来事が、想定していなかった未来で生きました。

 ここからは、やっておけばよかったことを5つ紹介します。

6)自分の足で立つ(独立する)
 今の若者たちは自分で会社を興し、自分の創造したサービスで、自分の存在意義を世に問うています。すごくかっこいいなと思います。

7)Go Global
 留学していた時、日本へ帰国するか米国に残るかで悩みました。「英語ばかり話すのはキツい」と日本に帰国したのですが、あの時、「Go Global」していれば全く違う人生が待っていたと思います。

8)チャレンジ精神をキープする
 留学時代の同期生は、当時規模が小さかった米グーグルに入社して偉くなっていたり、世界に大きな影響力のあるサービスをローンチしたりしています。自分ももっと新しいことにチャレンジすればよかったと思います。

9)もっとバンバンお金を使う
 留学していた頃は貧乏で、お金がかかることは、あまりできませんでした。ある年の夏休みに、(フランスの)「パリにある大学で研究をしないか」という話がありましたが、費用が30万円かかると言われ、渡航を諦めてアルバイトをしていました。でも、パリ行きを経験していたら、ものすごく有意義だっただろうなと思います。借金してでも自分に投資することが大事だったと思います。

10)自分の人生を生きる(他人のことを気にしない)
 私のキャリアは、他人から見ると“キラキラ”かもしれません。でも、キラキラのキャリアでお金を稼げるわけではない。大切なのは「事業の価値に貢献できる人材かどうか」です。私はキラキラした人生を歩みたいと思っていたわけではありませんが、もしかしたら、他人のことを少し気にして生きてきたかもしれないという反省があります。他人の目を気にせず、ピュアに自分の人生を生きればいいというのが、私から皆さんに伝えたいことです。

安倍:続いて小林さん、プレゼンテーションをお願いします。

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