勝負は35歳以上、今は目の前のことをやりきろう
林さんと大澤さん、お互いに相手が挙げた10の挑戦のうち、最も共感したのはどれですか。
林氏:3歳で既にドラえもんをつくりたいと思った大澤さんが、「志は暫定で決めていい」と言ったのは、すごく印象的で共感しました。僕もその通りだと思います。僕は42歳で初めて志を見つけ、「一生を懸けて、これをやりたい」と思いました。42歳で見つかってラッキーでしたが、今にして思うと、それが見つかることすら重要ではないと思います。「成功したい」とか「起業したい」とかいう思いで志を探すくらいなら、周りで志を持っている人をしっかり支える方が大事です。自分が必ず志を見つけなければいけないというよりも、自分に合ったものを探せるように行動範囲を変えたり居場所を変えたりして視野を広げていくことが大事なのではないでしょうか。
大澤氏:僕が「ドラえもんをつくる」と言っているのは一種のラベル張りです。もちろん、本当につくるのですが、それに向けてやっている中身はその時々で違っていて、プログラミングをやっていたりロボットをつくっていたりします。大元のドラえもんという志は変わりませんが、それに向けて今歩む道を方向付ける志は変えてきているし、それらをやってきたからこそ、厚みが出ていると思います。志や夢を持つことは「絶対的な正解」のように捉えられがちですが、そうではないと、林さんに共感していただけたのはうれしいですね。
シンギュラリティー(技術的特異点)はどれぐらい後に実現するのでしょうか。少し前には2045年に到来するなどと言われていましたが、最近の知見ではどうなっているのでしょうか。
林氏:部分的なシンギュラリティーは来ると思います。人の考えを超えたクリエーションをAIが手掛けるということで言えば、GAN(敵対的生成ネットワーク)なども、その一種とも言えます。汎用人工知能でいつ起きるのかと言われると、さっぱり予測がつかないですね。ただ、シンギュラリティー自体が汎用人工知能で起きると定義されているわけではないので、そういう意味では2045年までに何らかの形で実現するであろうと言えますね。
大澤氏:シンギュラリティーについては専門に議論している機関・集団があります。その議論の前提は3種類に分かれ、第1が、前提がないもの。この時の多くの議題は「シンギュラリティーがくるかこないか」になる傾向があります。第2はシンギュラリティーが来ることを前提に「いつ来るか」、第3は「シンギュラリティーが来るか来ないかは問わない」という前提での議論となっています。今のご質問は第2に当たりますが、専門家たちは第3の前提で議論をしています。つまり、シンギュラリティーがいつ来るかを予測することは、あまり意味がないのではないかと専門家たちは見ています。
シンギュラリティーの議論は「収穫加速の法則」をベースに出てきました。新しいテクノロジーが出ると、そのテクノロジーが次のテクノロジーをより早く生み出すため、技術の進展は指数関数的に進むというのが収穫加速の法則です。このように、技術が指数関数的に進むことを前提として技術のこと、未来のことを議論しようというのが専門家たちのスタンスです。
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