苦闘した時は「寝て食べて1年やり過ごす」

安倍:ありがとうございました。では、ウェビナー視聴者からの質問にお答えいただくQ&Aタイムに移ります。最初の質問は林さんに向けてのものです。

 私は34歳になった今年、長年いた部署から専門外の部署に異動となり、適応に苦労しています。林さんが30代半ばで専門外の仕事に就いた時にはどのように乗り切ったのか。経験談を詳しくお聞きしたいです。

林氏:私は異動して、マイクロマネジメントを実践する先輩の下で仕事をしました。そのおかげで細部まで仕事が分かるようになりましたが、とても大変でした。あの時どうやって乗り越えたのか……。とにかく、きちんと寝るようにしたことがよかったのではないかと思います。寝られなくなると心身ともに悪影響が及びますからね。

 その後は、時間が解決したというところがあり、1年ぐらいで自然に慣れました。

 起業した後も同じように寝られなくなったことがありました。寝られないのは精神的な疲れと肉体的な疲れのバランスが悪いせいです。精神的に疲れすぎて寝られないことが多いと思うので、無理やりにでも体を動かしてください。つらい時こそ体を動かす。そうすると寝られます。自分の神経系を信じて、寝て食べて1年やり過ごせば何とかなると思います。

 林さんに質問です。今までとは全く違うロボットの世界に入る際、たくさん苦労があったと思います。未知の領域に飛び込むという決断を支えたのは、どんな思いでしたか。

林氏:私自身、未知の領域に飛び込むのが得意なタイプではありません。ただ、英語もできないのにフォーミュラ1のチームに入るなど、35歳を過ぎた頃に、未知の領域に飛び込む経験を複数回積んだことで、ジャンプの幅が徐々に広がりました。そのため会社勤めから経営者へのジャンプは、それほど大きく感じませんでした。自分にとってはどれも同じぐらいのむちゃなのですが、そのむちゃがスタンダードになったという感じです。

 こういうジャンプが重要だということは孫正義さんから学びました。あれだけ成功した人が今も「Stay hungry, stay foolish」を実践しているのを見て、それ自体がバリューになると気づきました。

 大澤さんに質問です。「秘密道具を用意する」とおっしゃっていましたが、どういったものを用意すればいいのか、具体的な例を教えてください。

大澤氏:秘密道具とは、その人なりに「これをやったら楽しい」「これをやったら立ち直れる」「元気になれる」といったものです。自分がうまくいかない時に、そこから抜け出す方法を考えるのはしんどいので、事前に準備しておくといいと思います。中身は何でも構いません。先ほどは本を読むことが秘密道具になると説明しました。「ストレスがたまった時にはショートケーキを食べる」でもいい。うれしかったことをメモしたノートも秘密道具になります。見返すとうれしい気持ちが戻ってきますから。自分の人生の中のちょっとよいことをしっかり大事にためておくといいのではないでしょうか。

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