物心ついた時からドラえもんがつくりたかった

安倍:ありがとうございます。では大澤さん、プレゼンテーションをお願いいたします。

大澤氏:まず自己紹介をさせていただきます。いつからかは分かりませんが、少なくとも3歳の頃には、既に「ドラえもんがつくりたい」と思っていました。今は28歳なので25年ぐらいドラえもんをつくることを目指しています。

 ロボットをつくり始めたのは9歳頃のことです。その後、工業高校に進学し、以後技術の道を歩みます。大学入学後に岐路に立ち、技術漬けだったそれまでの人生に不安を感じた時には、「技術に触れない」という縛りを自分に課して、世の中の幅広い価値を知ろうとしました。

 そして大学4年の時に「全脳アーキテクチャ若手の会」というコミュニティーを立ち上げました。今は昨年12月に日本大学の文理学部内に立ち上げた「次世代社会研究センター(通称RINGS)」のセンター長をしています。

 今は、「ドラえもん」に出てくる「ミニドラ」というキャラクターにインスパイアされたロボットをつくっています。ミニドラが話す言葉は「ドラドラ」だけ。それでも、のび太君やドラえもんと上手にコミュニケーションを取ります。このロボットを開発しながら、ミニドラやLOVOTがドラえもんになるためのブレークスルーはどこにあるのかを探っています。

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 こうしてロボットを開発しながら、認知科学、神経科学など異分野のプロの人とつながり、様々な知能の研究を進めています。特定のタスクのために設計された現代の多くの人工知能(特化型人工知能)と対比して、ドラえもんのように様々なことができる人工知能を「汎用人工知能」と呼びますが、私は日本で唯一、そのテーマの博士論文を出しています。

 RINGSのコンセプトは「100人で100人の夢をかなえるコミュニティー」です。

 今の組織は1人の夢を100人で支える構造ですが、そうではなく100人で支える1人の夢が100通りあって、それを全員が全員を支える構造にできれば、理論上は、1万人規模の価値創造が可能になるかもしれません。それができれば価値の生み出し方に根本的なイノベーションを起こせるとイメージしながら、ドラえもんと、ドラえもんをつくる組織を一緒につくろうとしています。

 では、28歳の僕が話せることなのかは分かりませんが、若手時代にやっておくべき10のことを紹介します。

(1) 志を立てる。
 僕はやりたいこと、志、夢などは暫定で決めていいと思います。言葉は悪いですが、適当でもいいのです。取りあえず決めたら迷わずに進み、暫定1位が変わったら方向転換することを若いうちからやっておくことが重要だと思います。

(2)自己紹介ができるようになる。
 自己紹介ができるということは、自分の価値軸がしっかりあり、自分は何者かが分かり、言語化でき、それを説明できるということです。自分で自分のことが分かれば、意思決定も明確になります。周りの人たちを見ても、自己紹介ができるかできないかが世の中で活躍しているか否かの境目のように思います。

(3)仮説を立て「信じ抜く」「疑い尽くす」。
 自分が立てた仮説を信じ抜くことが行動力につながります。僕は「どうやったらドラえもんができるか」という大きなテーマから、「今日の夜ご飯は何を食べようか」という小さなテーマまで、すべてに仮説を立てます。「ハンバーグを食べたら満足度が上がるのではないか」といった具合です。同時に、若手時代は視野が狭いので、徹底的に仮説を疑い尽くすことも大事にしています。今の視野で精いっぱいやること、視野を広げようとすることのバランスが大事だと考え、自分の仮説を信じ抜くことと、その仮説を疑うことを交互にやるようにしています。

(4) 人の言うことを聞く。

(5) 人の言うことを聞かない。
 人の話を聞くことで広がる世界があります。学生の話も、いつも「教えてもらう」気持ちで聞いています。一方、人の話を聞かない時もあります。「ここだけは変えない」という信念は守ります。世の中の人が全員、「それはダメだ」と言っても曲げないことがイノベーションの種になることもあります。聞くこと、聞かないことを両方持つことが大事です。人の話を聞く時が9割、聞かない時が1割と割合を決めています。

(6) 本を読むことの価値を知る。
 ドラえもんはポケットにいっぱい秘密道具を詰めています。我々も、人生で勝負をかける時のために、自分を救う秘密道具をいっぱい持っておくといいと思います。汎用性があり、お勧めしたい秘密道具は「本」を読むことです。僕自身、困った時に本を読んで問題を解決した経験があり、以来、壁にぶつかった時には本を読むことを秘密道具としています。

(7) 全部「自分のせい」にしてみる。

(8) 物語の主役になりきる。

(9) 物語の脇役になりきる。
 漫画作品の「ONE PIECE」を読んでいると、頭の中でサクセスストーリーをイメージすることの強さを感じます。主人公がいつも言っている「オレは海賊王になる」というセリフを自分でもイメージすると、日々のエネルギーがどんどん湧き、くじけそうになった時に前に進む気力をもらえます。「人生、終わった」と思うようなショックなことがあっても、「これは、最高のサクセスストーリーのための伏線だ」と考えるクセをつけると、すべてのことがうまくいっている感覚を味わうことができます。

 といっても、僕はみんなでドラえもんをつくりたいので、脇役になりきることも意識しています。いつも、「目の前の人が主役となる物語があったら、自分はどんな脇役になれば一番すてきだろう」と考えながら人と関わっています。

(10)仲間を大切にする。

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