再び事業について。有機農業はこだわりの強い生産者さんが多いですよね。良い意味で頑固な一方、取引先を開拓するのは相当な苦労ではなかったですか。

高島氏:僕たちの場合、根っこはウィンウィンだったんです。有機農法でこだわって一生懸命作っている方々にとって、実践されている農業がより多くの人に受け入れられて経済的にも潤い、さらなる投資・事業拡大ができるようにと。農家さんにとって良い話だったので、あとは自分たちがそれに値する存在であると信じてもらえるかどうかでした。だから、しつこくお願いし続けました。自分の得意技の一つが「粘り気」だということに気づいたので、しつこく口説けば先が見える状態にたどり着くと本領を発揮しました。そういう勝負ならば得意でした。

弱みは後でいくらでも補完できる

創業期の苦しみに耐えて今の成長がある一方、ここ10年で世の中の働き方も若手の感覚もかなり変わりました。社員教育の方法にも変化がありますか。

高島氏:世代差よりも個人差のほうが大きいと思っています。同じ世代でもいろいろな人がいてモチベーションも様々です。「自分がハイパフォームするのはどんなときか」「自分の学ぶ角度が鋭いときはどんなときか」を一人ひとりに知ってほしいですね。若い人には自分の「好き嫌い」で判断するのでなく、自分がハイパフォームしている状況を言語化するのがすごく大事だと思います。

 実は、好きなことが強みっていう、大リーガーの大谷翔平さんみたいな人はなかなかいないですよ。(好きかどうかは別として)普通にやっているつもりなのに、周りよりはるかにうまくいっているなっていう人のほうが多い。でも、それに気づいていないとその仕事を好きになれないんです。それに気づくと、周りよりうまくいくのでだんだんと好きになる。我慢できないほど好きなことがあると明確でなければ、得意なことを見つけるほうが20代においては超重要ですね。

 20代の人たちで多いのは、何を学びたいのかと聞かれて、やった経験のないことを言うケースですね。「全然経理とか分からないんで」とか「ITとか勉強しようと思っている」とか。しかし、弱みは後でいくらでも補完できるんです。強みで突き抜ければ、弱みをカバーしてくれる人は周りにいます。平均的にバランスよくやるんじゃなく、自分の強みのタネみたいなものを徹底的に磨くことが大事なんじゃないかなと思いますね。むっちゃバランスの悪い人になってほしいですよ。突き抜ければ、弱みは30代で何とでもなりますから。そこは周りの人も諦めてくれますし。

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30代でダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)に出席した際、外国人の「空気を読まない姿勢」に衝撃を受けつつ利点も感じたそうですね。

高島氏:どの分野でもそうですね。経営でも常に流行する分野というのはあって、足元でもガバナンス強化、ESG(環境・社会・企業統治)、カーボンニュートラルなど多岐にわたります。でも、「みんながやるから」という理由だと長続きしないんですね。同じことをやる限り、みんなより上にも行けません。失敗はしにくくなるけれど、成功もしにくくなります。空気や流行に乗っかるというより、自分なりの解釈が常に重要です。

 東日本大震災の直後、私たちが食品の放射能検査を始めたときにも感じました。当時、民間が安全性を検査することを政府は善しとせず、やめてほしいとのスタンスでした。しかし、僕らは必要だと思っていたし、そこから信頼が広がっていくのは政府にとってもプラスになるはずです。だから実行しました。あえて空気を読まない、流されないというのと、自分の頭で考えることの両方が大事だと思いますね。

高島社長は40歳を目前にした頃に東証マザーズへ上場しました。30代では、どんな課題に直面していたのでしょうか。

高島氏:30代になって東日本大震災が起き、農家さんを含め被災地の方々は本当に大変な状況でした。少しでも助けになれればと思いながら、一方で自分たちのビジネスも(調達や物流をはじめとして)矢継ぎ早の対応が必要でした。その中で、私もこのチームも有事のときに強みを発揮できるとも感じました。

 その後に熊本でも震災が発生し、さらに農業にとって厳しい異常気象も何度も襲いかかりました。ただ、有事に結束して対応できるのは強みだと認識しました。

 そして(40代になって)自ら難しい状況をつくって挑もうと、大地を守る会との経営統合に至りました。カオスの状況になると辛いですが、その分だけ頑張って働くことになるんですよ。文化も言語も異なる人どうしが一緒になるので、ケンカも多々ありました。でも楽しいんですよ。

創業から21年たち、2021年3月期に売上高1000億円を超えました。今は巡航速度に入ったのでしょうか。

高島氏:有事には、常に環境変化に対応する有事と、自らつくっていく有事の両方があります。その中で、攻め時に攻められるかどうかが大事だと思っています。今が頑張り時なんだと認識できるかどうかと、そのときに頑張れるかどうか。それは、普段やっていることを捨てられるかどうかなんです。

 頑張るという気合だけだと大して(成果にはつながらない)。普段やっていることを全部やめれば、それだけリソースは増えます。逆に言うと頑張らないときも必要なんです。100メートル走のスピードでマラソンは走れませんが、企業経営はマラソンですから。そして、スピード変化の多いマラソンなのです。

紙のノートを持ち歩く理由

コロナ禍で平日はリモートワークの会社員が増え、休日も遠出はできず内省的な時間が拡大しました。20~30代の土日の使い方について、アドバイスをください。

高島氏:どうしたら自分の調子が良くなるのかを考えたほうがいいと思います。休んだほうがいい人、遊んだほうがいい人など様々です。ただ、20代と30代は異なります。大学生の頃は「とにかく旅に出ろ」でもいいんですが、20代後半から30代になったら自分を知らないといけない。そもそも自分のコンディション、体調もメンタルも含めてどうやって整えていくのか。

 自分自身は先週と違う週末を送りたいと思っているタイプなので、アートに触れる日、(日本車いすラグビー連盟の理事長として)車いすラグビーの試合を見に行く週末など、何々の週末と名前の付くようにしているのが自分にとってはいいですね。肉体的に疲れやすくないのであまり休まなくてもいいのですが、同じことをやっていると視座が低くなりがちなので、できるだけ違うテーマを決めて過ごすようにしています。自分自身をレビューしていない人が多いと思うので、オススメは言語化することです。

高島社長はそうしたレビューやビジネスのために、紙のノートを持ち歩いていますね。ITのエキスパートながら、大事な考えはエクセルやワードに打ち込むのでなく、あえて自筆なのですか。

高島氏:書くのは時間がかかるけれど、僕の場合は自分の筆跡が記憶のスイッチになっています。それが過去と瞬時に結び付く方法だと気づいたんです。ミーティングの中には、先月以来というケースもありますよね。「この話なんだっけ」という時にノート内のメモを見ると、そのときの自分の考えや感情に一番早く戻れます。自分にとっては、実は無駄な時間を減らせる方法なんですよ。逆に、誰かがメモとして打ち込んでおいてくれたのを見ても、なかなか思い出せないタイプですね。だから、もう71冊目になるんですが、今でも手書きのノートを大切にしています。

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テーマ:「アートとサイエンス、両方を理解する人になる」
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