<span class="fontBold">「日経ビジネスLIVE」とは</span>:「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト
「日経ビジネスLIVE」とは:「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 ビジネスパーソンとしてどう成長していくか――。特に若い世代では大きな関心事です。では、注目を集める成長企業の経営者は、30代までに何を学び、どんな経験を積んできたのでしょうか。本インタビューシリーズでは、若手ビジネスパーソンにも知られる起業家・経営者に「自分のいまを形づくった若い頃の経験、努力、失敗」などを振り返っていただきます。また、本シリーズと連動して日経ビジネスでは、若手読者向けにこうした起業家・経営者の経験やビジネススキルをオンラインで学ぶ日経ビジネスLIVEを展開しています(8月24日、31日、9月14日開催予定、日経ビジネス電子版有料読者は受講料無料です)。ウェビナーの日時・プログラムの詳細はこちらをご覧ください。

個人のリスク許容度や期待するリターンに応じた最適な資産運用法を提案し、自動で運用するロボアドバイザー。柴山和久氏が2015年に創業したウェルスナビは、国内最大手のロボアドバイザー投資サービスを手がける。20年12月には東証マザーズに上場し、直近の預かり資産は5000億円を突破した。起業家として順調な道を歩む柴山氏だが「もともと起業するつもりはなかった」と話す。東大を卒業し、財務省でキャリアをスタートした柴山氏は、なぜスタートアップの世界に身を投じたのか。

財務省に入って10年目、働き盛りの時期に辞められています。理由は何だったのでしょうか。

柴山和久・ウェルスナビCEO(以下、柴山氏):家族との時間を優先するためです。米国人の妻とは財務省時代に留学したハーバード大学の茶道部で知り合い、遠距離恋愛を経て結婚しました。

 結婚当初、私は英国の財務省に出向しており、英政府の予算づくりを担当していたのですが、労働時間は、午前9時ごろから午後6時ごろまでと厳しく管理されていました。週の半分は夕食づくりを担当するほど、プライベートの時間は確保できていました。

 それが日本に帰国すると、状況が一変しました。朝は9時半ごろに登庁し、忙しい時期には毎日午前2時、3時過ぎに退庁するような状況でした。

<span class="fontBold">柴山和久(しばやま・かずひさ)氏</span><br />2000年に東大法学部を卒業後、財務省に9年間勤務。米ハーバード・ロースクールを卒業し 、日英の財務省で予算、税制、国際交渉を担当。退職後はフランスの経営大学院INSEADを卒業し、10年にマッキンゼーに入社。ウォール街の機関投資家向けに10兆円規模のリスク管理・資産運用プロジェクトに携わる。次世代の金融インフラを構築したいという思いから、15年3月に退社し、同年4月にウェルスナビ 株式会社を設立。ニューヨーク州弁護士登録。(写真すべて:陶山勉)
柴山和久(しばやま・かずひさ)氏
2000年に東大法学部を卒業後、財務省に9年間勤務。米ハーバード・ロースクールを卒業し 、日英の財務省で予算、税制、国際交渉を担当。退職後はフランスの経営大学院INSEADを卒業し、10年にマッキンゼーに入社。ウォール街の機関投資家向けに10兆円規模のリスク管理・資産運用プロジェクトに携わる。次世代の金融インフラを構築したいという思いから、15年3月に退社し、同年4月にウェルスナビ 株式会社を設立。ニューヨーク州弁護士登録。(写真すべて:陶山勉)

 国の財政という同じ仕事をしていてなぜこんなに労働時間が違うのか、米国人の私の妻にはまったく理解できず、彼女は混乱するばかりでした。対する私も、毎日明け方まで仕事する理由を英語でロジカルに説明できません。日本語でなら「こういうものだ」と片付けられたのかもしれませんが。

 仕事は年々面白くなってきていたし、やりがいを感じていました。時間があれば、組織に残って働き方を少しずつ変えていくよう提案する選択肢もあったでしょう。ですが私の場合、時間をかけていては家庭が先に崩壊してしまいます。それもあって、国家公務員を退職することを決めました。

日本と英国、同じ財務省なのになぜこんなに働き方が違うのでしょうか。

柴山氏:政策の決め方や意思決定プロセスが、英国と日本では大きく異なる点がまず挙げられます。予算編成を例に挙げると、予算を要求する政策官庁と、予算を査定する財務省が、同じルールや考え方にのっとり、議論を進めます。ある政策を実行するにはこれくらい費用がかかる、ではこの政策は将来にわたってどういう効果が期待できるのか、費用対効果の観点から国の税金を使う政策として適切なのか、適切だとしたら財源はあるのか――。日本でも英国でも、こんなふうに予算が決まっていくのですが、英国では、このプロセスを定型的・効率的に進めていけるよう、政府全体で統一しています。

 財務省だけでなく、全省庁の予算担当者が、予算要求や査定について、共通のトレーニングを受け、共通のルールとプロセス、データを用いています。さらに、人材交流も盛んで、各省庁の予算担当者が財務省に転籍し、財務省で予算づくりの経験を数年間積んだ上で、また別の省庁の責任のあるポジションに転籍していました。

 こうした仕組みや知識・知見、人材の共通化により、効率的に予算をつくることが可能でした。このため、難しい案件を除いて、財務省による予算ヒアリングも、午前10時から午後4時までという時間的制約の中で完了できたのです。

仕事の手順がフォーマット化されていると、効率がずいぶん異なるのですね。

柴山氏:はい。後に働いたマッキンゼーでも、プロジェクトの進め方、プレゼン資料の作り方から、採用や昇進の基準までグローバルに共通化されていました。例えば、プロジェクトの初日にはチームで何をするのか、1週間目にどのようなプレゼン資料のドラフトが出来上がっているべきかから、プレゼンの各スライドのどこにどのようなパーツ(見出しやグラフなど)を配置するかまで、事細かに決まっています。このため、複数の国のメンバーでプロジェクトを行う場合にも、初日からスムーズにチームワークを発揮して、短期間で大きな成果を上げられる仕組みになっていました。

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