
ビジネスパーソンとしてどう成長していくか――。特に若い世代では大きな関心事です。では、注目を集める成長企業の経営者は、30代までに何を学び、どんな経験を積んできたのでしょうか。本インタビューシリーズでは、若手ビジネスパーソンにも知られる起業家・経営者に「自分の今を形づくった若い頃の経験、努力、失敗」などを振り返っていただきます。
本シリーズと連動して8月から、こうした起業家・経営者の経験やビジネススキルをオンラインで学ぶ、日経ビジネスLIVEの第2弾を若手読者向けに展開していきます(電子版有料読者は受講料無料です)。ウェビナーの日時・プログラムの詳細は記事末尾をご覧ください。
印刷のシェアリングサービスを手掛けるラクスルを率いる松本恭攝氏。稼働率の低い機械を持つ印刷会社とユーザーを結びつけ、設備稼働率を高めつつコストを削減するというビジネスモデルを生みだした。現在は印刷だけでなく、物流のシェアリングサービス「ハコベル」、広告のプラットフォーム「ノバセル」を展開する。コンサルティング会社を経て起業した松本氏が、起業家や新規事業開拓に必要と考えるスキルとは。

ラクスル社長CEO(最高経営責任者)1984年生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、2008年にA.T.カーニー入社。09年9月にラクスル創業。13年に印刷のシェアリングサービス「ラクスル」、15年に物流のシェアリングサービス「ハコベル」を展開。18年に東証マザーズ、19年東証1部上場。20年に広告のプラットフォーム「ノバセル」開始(写真:北山宏一)
松本さんは大学卒業後、大手コンサルティング会社に入り、その1年後に起業しました。学生時代のどんな経験が、自身を起業へと突き動かしたのでしょうか。
松本恭攝・ラクスル社長CEO(最高経営責任者、以下松本氏):大学時代に経験した中で1つ大きかったのは、(国際ビジネスコンテストを運営する)学生団体「OVAL」を立ち上げたことです。日本・韓国・中国を巻き込んだ大規模なイベントを成功させたことが、「ゼロイチ」(ゼロからイチを生む)の経験になりました。「ゼロイチって自分にもできるんだ」と感じましたね。
もう1つ大きな経験を挙げるなら、米国のサンフランシスコやシリコンバレーで、起業家やエンジニア、投資家と対話したこと。就活後にバックパッカーとしていろいろな国を回っていたのですが、2007年当時はリーマン・ショック前で米国にはスタートアップが多かった。多くの起業家と出会ったことで、起業に対する憧れを抱きました。
シリコンバレーに憧れ
起業意識は高かったというわけですね。
松本氏:05年に米アップル創業者のスティーブ・ジョブズが、米スタンフォード大学の卒業式で「ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ」で有名となる演説をしました。私自身は07年からカナダのバンクーバーに語学留学し、英語の勉強でそのスピーチを聞いていました。
当時、カナダでは「フェイスブック」がメジャーなSNS(交流サイト)として台頭してきており、「セカンドライフ」もはやっていました。ユーザーとして触れていたこともあり、シリコンバレーに行ってみたいと考えたわけです。多くの起業家に直接メールを送り、会えたことは貴重な経験になりました。
帰国後、内定が出ていたコンサルティング会社のA.T.カーニーに入社しました。起業熱は高まりませんでしたか。
松本氏:すでに内定が決まっていたということもありますが、当時は「ライブドア事件」もあり、スタートアップに対していいイメージがありませんでしたね。私自身も起業は選択肢にすらなかった。
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