議論の応酬を通じて「耳」から学ぶ

どうやって、その面白い部分を聞き出すのですか。

佐々木氏:いったん、相手の言っていることを抽象化して、「こういうこと?」と聞き直します。ちょっと違うとか言われるんですが、それも面白くて、また議論をして抽象化する。それを繰り返しているうちに、面白い視点が見つかります。禅問答みたいな議論をした結果、翌年には自分の中に取り込んだ内容を行動に移しているという感じですね。

そうした変わった人の熱量にあてられて、良い影響を受けてきたのが佐々木さんなのですね。

佐々木氏:そうですね。中学、高校時代に好きだった先生は、地学を担当していて、日食などイベントがあると外国に行って、授業が休みになるんですよね。帰ってくるといかに素晴らしかったかをずっと話し続けるんですけど、好きなことを追求している人が格好いいなぁと感じるんですね。

 好きな分野で頑張っている人って、注目されていなかったとしても面白いから、結果として影響力を持ってしまうんですね。こういう人たちから、周りは学べることがある。

 これからは特定のリーダーが注目されるのではなくて、一人ひとりの取り組みや考え方が影響力を持つ時代になるでしょう。コミュニケーションの手段が充実していますから。人とのコミュニケーションから学ぶ重要性も、高まってきていると思います。

議論の応酬を通じて、その人の考えの軸に何があるのかが徐々に分かってくる。 一種の「耳学問」といった感じですね。

佐々木氏:まさに耳学問ですね。プロダクト開発でも目指している方向性などについて議論を重ねます。ユーザーは何を大事にしているのか、世の中はどう変わっていくのか、抽象化して議論して納得がいったことを実践することはすごく重要だと思っています。

忙しい社長業を続けていると、議論の時間は減りませんか。

佐々木氏:そんなことはないですよ。会社の戦略、今後の方針でも議論しますし、採用面接でもします。結果、うちで一緒に仕事をするのは違うなというケースもあるんですけど、議論そのものはすごく面白かったなと記憶に残る人もいます。そのとき、自分が感じている課題をどう感じるかを聞いたり、その人が大切にしているものを聞いて何が楽しいのかを聞いたり。

20~30歳代、エネルギーを持て余して、何をしていいか迷っている若者に呼びかけるとしたら、どんな言葉をかけますか。

佐々木氏:「これは意義がある」と感じるものに出会うのが大切です。例えば、私はデータ分析が好きですけど、その先に何があるんだろうと思うときがあった。「世の中の課題を解決するんだ」とか一つの芯を見いだせると、楽になりますよね。

見つけるのは容易ではなさそうです。

佐々木氏:そういうときに、地味なところに着目するのが重要じゃないかと思います。これまで、「キラキラ」していない友人の話をしましたけど、そこが重要なんじゃないかな。キラキラしているところに課題はなくて、キラキラしていないところに課題があると思う。

 そういう部分に面白さを感じてみる。例えば会社の中で一番注目されていないところにヒントがあるかもしれない。「これってなんで注目されていないんだろう、実は面白いんじゃないか」と考えてみるとか、そういったことだと思います。

中小企業ビジネスも「キラキラ」はしていないかもしれません。人生の転機に影響を与えてくれた友人や知人も「キラキラ」していないとしたら、佐々木さんの軸は「みんなが注目していないところに面白さを見いだす」ということなんですね。

佐々木氏:そうそう。そうだと思います。「人と違うことをしろ」というと少し雑な助言だと思っていて、「地味でキラキラしていないところに着目してみよう」ということだと思います。

聞き手から

 佐々木氏に初めてインタビューをさせてもらったが、おそらく話すよりも聞き上手なのだろう。経営者としては珍しいのかもしれない。人が注目していないところに情熱を傾ける人の熱量は、周囲の人を圧倒することがある。佐々木氏は、そういった「変わった人」との議論を通じて、その考えを自分に取り込み、行動力に変えてきた。

 インターネットの発展とコロナ禍での生活スタイルの変化は、遠隔コミュニケーションの障壁を下げ、ある意味で人と接点を持つチャンスを増やしたと言える。「耳学問」の実践は、自分の方向性を固めるのに大いに役立つ時代になったのではないだろうか。

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