ボトムアップでスペシャルティコーヒー市場を広げていくと、既存の大手はいい気がしませんね。
丸山氏:反発もありました。「値段を上げるんじゃねぇよ!」とか言われたこともありましたね。ただ、コーヒーを巡っては、生産者の搾取だったり、いろいろな問題を解消しなければいけない時期でもありました。高品質な豆に、しっかりと対価を支払って生産者に還元する。生産者はさらに品質の高い豆を作る。こうした正の循環が生まれることは、コーヒー業界全体にとっても、社会にとってもプラスです。
ビール業界も、大手とクラフトビールにはかつて明確な境界線のようなものがありましたが、今では大手もクラフトビールを造るようになりました。コーヒーも同じです。スペシャルティコーヒーとコマーシャルコーヒーの間には大きな川が流れていました。でもその流れが細くなり、歩いて行き来できるレベルになりつつあります。
町のコーヒー屋さんに始まり、気づけば世界のコーヒー豆を知り尽くす存在になりました。丸山さんにとって、20代や30代はどのような時期だったでしょうか。
丸山氏:20代は日本一の焙煎職人になることを目指していましたから、本当に数をこなす時期でした。お金もなかったし。ただひたすらに焙煎作業をして自らの知見を深めていった時代です。
そして大きな決断を下して豆の買い付けをするようになり、海外への送金なども地元の地銀に助けてもらいながら学びました。
30代は豆の買い付けで実際に世界を飛び回り始めたので、一番働きましたかね。死ぬほど働きました。
直射日光が差す中南米の山の中を一日中、生産者と話しながら歩く。汗だくになって街に戻って会食し、終わってホテルに午後9時に着いてから会社の資金繰り表を作り始めるんです。日本で銀行が開いている時間に合わせて深夜まで作業をして、翌朝8時にまた別の生産者さんを訪ねるような生活をずっとしていました。品評会でテイスティングをしている際に、立ったまま寝てしまったこともありました。
20代は焙煎など内の現場に集中し、30代はひたすら外の現場に行きました。年に20回ぐらい出国して、ホンジュラスに4回行った年もありました。ボリビアやコロンビアにも毎年3~4回は行っていました。
「当たり前」に慣れてしまうのが最大のリスク
新型コロナウイルス禍で、海外へ買い付けに行けなくなりました。
丸山氏:世界が一変しました。丸山珈琲としても、20年に3店舗を閉める決断を下しました。そのときはこの世の終わりだと思ったんです。でも、今振り返ってみると、早めに決断できてよかった。周りからもよく早く決断できたなと言われます。
それまであって当たり前だったモノがなくなるのってすごく違和感がある。慣性の法則とでもいいましょうか。その違和感を嫌って動かずにいると、時代や変化の波に乗り切れず、手遅れになる。そこが一番のリスクかもしれません。
コロナ・ショックで新たな時代が到来したとも言えます。生産者とはオンラインでもコミュニケーションができるようになりましたし、自宅での生活を見直してコーヒーを楽しむ文化もまた広まりつつあります。それに合わせて、これまではやってこなかったペットボトルのコーヒー飲料を出すなど、当社としても新たなチャレンジをしています。
最後に、若手ビジネスパーソンに向けてメッセージをお願いします。
丸山氏:自分の得意分野を見つけて掘り下げてほしいというのがありますね。あとは、自分の会社や環境がどういう状況なのかを見てほしい。私は起業から成熟するまでを川の流れでよく例えますが、スタートアップの時期は上流でとにかく流れが急で岩もあって危ない。気をつけないと船自体が壊れてしまう。でも、中流になると操縦のコツもつかめて、下流に行けば安定する。
個人によっていろんな志向があるでしょう。どんな会社で何をするのか。あるいは自分で起業するのか。それぞれの得意分野を見つけて挑んでほしい。でも、挫折をして、たとえ最短距離で目的地へたどり着けなくても落胆しないでください。回り道をしながらも自分の進む道を決めて着実に歩みを進めれば、視界は開けます。私の人生が、それを証明していますから。
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