
ビジネスパーソンとしてどう成長していくか――。特に若い世代では大きな関心事です。では、注目を集める成長企業の経営者は、30代までに何を学び、どんな経験を積んできたのでしょうか。本インタビューシリーズでは、若手ビジネスパーソンにも知られる起業家・経営者に「自分のいまを形づくった若い頃の経験、努力、失敗」などを振り返っていただきます。
また、本シリーズと連動して日経ビジネスでは、若手読者向けにこうした起業家・経営者の経験やビジネススキルをオンラインで学ぶ日経ビジネスLIVEを展開しています(電子版有料読者は受講料無料。申込制、先着順)。7月1日19時(夜7時)にはリチウムイオン電池を発明した旭化成の吉野彰・名誉フェローの特別講演を予定しています。ウェビナーの日時・プログラムの詳細はこちらをご覧ください。
出雲充氏は20代で銀行員という安定した地位を捨て、ミドリムシを原料とする食品や繊維、燃料などの開発を手掛けるユーグレナを創業、社長に就任した。30代で東証1部上場を果たすなど、若手経営者のホープとして脚光を浴び続けている。そんな出雲氏も現在41歳。大学で学んだ農学の知識をベースに、20代や30代の後進に意外な言葉を贈る。
きょうは「20代、30代のうちにやっておくべきこと」を伺いに来ました。このテーマ自体、無意味だという意見でも構いません。
出雲充ユーグレナ社長(以下、出雲氏):ははは。私の性格が分かってきましたね。私が拒否反応を示すのを見越して、このテーマで話を聞きに来たのでしょう?

ユーグレナ社長。1980年、広島県生まれ。2002年に東京大学農学部農業構造経営学専修課程を卒業し、東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。05年、ユーグレナを設立
古典から学ぶ意味も薄れている
いや、まあ、その通りです。
出雲氏:この先何が起きるか分からないのに、「先を見越して若いうちに何をすべきですか」と聞かれても、正直答えられないです。新型コロナウイルスという新しい病原体が世界的に流行している現状を予測できた人はいませんでした。
同じように、ノーベル経済学賞の受賞者でもリーマン・ショックを予想できなかった。ボラティリティー(変動率)、アンサーティンティー(不確実性)、コンプレクシティー(複雑性)が高まっており、将来が全く見通せなくなっています。それなのに、何をしておくべきかと問われても……。日経ビジネスではほかにどんな人たちに話を聞いているのですか?
同じテーマでカヤックの柳澤大輔CEO(最高経営責任者)のインタビューや、マネーフォワードの辻庸介社長のインタビューなどをすでに掲載しています。
出雲氏:皆、優しいから「将来に向けて、こうしたらいい」と、ちゃんと答えているんだろうな。
そうですね。
出雲氏:私だけ何か嫌な人みたいになってしまう。
例えば古典と呼ばれる書物や映画はいつの時代でも通用します。将来が予測できなくとも、「若いうちは古典作品に触れて知見を広げるべきだ」などとアドバイスできます。20代、30代に向けてそんなメッセージを発してみたらどうでしょう?
出雲氏:けどテクノロジーの急速な進歩で、古典作品すら通用しない時代に私たちは足を踏み入れています。例えばAI(人工知能)が多くの分野で人間の知性を超え始めており、世界トップ級の囲碁棋士でももはやAIにかないません。テクノロジーが人間の知性を超えるのは、有史以来初めてのことです。「歴史は繰り返す」のであれば古典作品は通用するのでしょうけど、全く新しい時代がスタートした今、古典から学ぶ意味は薄れています。

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