スマートフォンでの利用は自由度を高める狙いも

 他にも3DのCGアニメーション制作者などがmocopiのターゲットとされているようで、主要顧客がクリエーターやVR先進層となることは間違いないだろう。mocopiはソニーストアでの販売価格が4万9500円と決して安いわけではないが、そうしたターゲットを狙った製品として見れば十分競争力のある価格だといえそうだ。

mocopiのターゲットはVTuberとVRChatなどのVRコミュニケーション利用者、そして3Dアニメーションの製作者となるようだ。写真は2022年11月30日、ソニー社内にて筆者撮影
mocopiのターゲットはVTuberとVRChatなどのVRコミュニケーション利用者、そして3Dアニメーションの製作者となるようだ。写真は2022年11月30日、ソニー社内にて筆者撮影
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 それだけに1つ気になったのが、mocopiを接続するデバイスがスマートフォンであり、パソコンではないことだ。用途的にもターゲット層が利用するデバイスはパソコンが主となるだけに、最初からパソコンで使えるようにしておけば手間がかからないように思うのだが、mocopiはパソコンに直接接続できず、あくまでスマートフォン経由でデータを送る仕組みとなっている。

 ソニーの新規ビジネス・技術開発本部 モーション事業推進室 室長の相見猛氏はその理由として、「パソコンのある場所に制約されることを取り払いたい考えがあった」と話している。3Dのコンテンツの制作者からすると、これまではモーションキャプチャーはスタジオの中でしか作業ができないという制約があったが、それを取り払って場所を問わずに利用できるようにしたのはmocopiの大きな狙いになっているのだという。

 実際、mocopiはスマートフォンに接続する形を取ったことで場所を選ばず利用できるようになったのに加え、Bluetooth接続している範囲内であれば動きを取り込めるので、ある程度の広さの空間内を動き回ることもできるという。スマートフォンを用いることでモーションキャプチャーのハードルを下げるだけでなく、自由度を高めることもmocopiの狙いとなっているようだ。

mocopiの接続先にスマートフォンを選んだのには、利用しやすくするだけでなくモーションキャプチャーをスタジオの呪縛から解放する狙いもあるようだ。写真は2022年11月30日、ソニー社内にて筆者撮影
mocopiの接続先にスマートフォンを選んだのには、利用しやすくするだけでなくモーションキャプチャーをスタジオの呪縛から解放する狙いもあるようだ。写真は2022年11月30日、ソニー社内にて筆者撮影
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 現時点ではmocopiの対象となる層が限られるし、価格やシステムなど様々な面で、手軽に利用する上ではまだハードルの高いデバイスであることは確かだろう。だがそれでもなお、モーションキャプチャーをここまで手軽なものにしたmocopiが秘める可能性は大きいといえる。今後メタバースがより広い層に浸透する時代が来ればこうしたデバイスの重要性が一層高まるのではないだろうか。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

[日経クロステック 2022年12月12日掲載]情報は掲載時点のものです。

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