『BCGカーボンニュートラル実践経営』
『BCGカーボンニュートラル実践経営』
(日経BP)

 二酸化炭素(CO2)が企業を揺さぶっている。カーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)に関しては2030年や2050年といった時間軸での報道がなされるが、これは「将来に解決すべき問題」ではなく、「今取り組まなければならない問題」である。では、企業は何をどのように考えて取り組めばいいのか。その疑問への答えを、ボストン コンサルティング グループ(BCG、東京・中央)の著者陣が書籍『BCGカーボンニュートラル実践経営』(2021年11月、日経BP発行)にまとめた。著者の1人で、BCGジャパンのカーボンニュートラル・気候変動領域を統括する丹羽恵久氏に、カーボンニュートラルで注目される技術や企業の勝負どころなどを聞いた。(聞き手=松山 貴之)

丹羽 恵久(にわ・よしひさ)
丹羽 恵久(にわ・よしひさ)
BCGマネージング・ディレクター&パートナー。慶応義塾大学経済学部卒業。国際協力銀行、外資系コンサルティングファームを経て現在に至る。BCGパブリックセクター・プラクティスの日本リーダー。BCGジャパンのカーボンニュートラル・気候変動領域を統括。ハイテク・メディア・通信プラクティス、社会貢献プラクティス、および組織・人材プラクティスのコアメンバー。共著書に『BCGが読む経営の論点2018』、『BCGが読む経営の論点2020』、日経ムック『BCGカーボンニュートラル経営戦略』(日本経済新聞出版)、『BCGカーボンニュートラル実践経営』(日経BP)。

カーボンニュートラルを実現するために、注目されている技術にはどのようなものがありますか

 期待されている技術はたくさんあります。そうした中で、CO2を回収することに絞ると「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」「CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」という技術があります。前者はCO2を回収して貯留する技術、後者は回収して利用する技術です。コンクリートに固めて使う技術などがあります。日本企業も強い技術を持っていて、かなり実用化に近づいています。そのほか、空気中のCO2を回収する「DAC(Direct Air Capture)」という技術も期待されていますが、実用化はもう少し先になる見込みです。

「カーボンニュートラルはビジネスの戦い」とのことですが、ビジネスとして成り立つのは関連技術を持つ企業だけのように思えます。技術を持たない企業はどうやって戦えばいいのでしょうか

 カーボンニュートラルの実現に「技術」の果たす役割は大きいですが、現在の世の中の仕組みを変えずに「技術」を適用するだけで実現できるとは思えません。私たちの生活も、流通の在り方も、商品そのものも、世の中のサービスも、CO2を排出しない方向に大きく変わってこそ実現できるのだと思います。仕組みが変わるということは、そこにビジネスチャンスがあるということです。

 米TerraCycle(テラサイクル)が進める「Loop」という事業をご存じでしょうか。これは、食品や化粧品などをリターナブル容器で消費者に提供し、容器や包装材をゴミにしない取り組みです。プラスチックなどの容器や包装材が不要になれば、それを作ったり焼却したりする過程で出るCO2を減らすことができます。

 テラサイクルは食品メーカーでも化粧品メーカーでもなく、この事業を運営するプラットフォーマーです。CO2関連の技術を保有していなくても、このようなビジネスモデルを構築できるという点で参考になる事例だと思います。

 既存の商品を環境にやさしい商品に変えていくアプローチもあると思います。実際、環境にやさしい商品なら多少高くても購入する消費者はいますし、そうしたブランドイメージを構築できれば、将来的に見て有望企業と評価されます。

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