オプションb
海外から水素を大量に輸入し、国内の再生可能エネルギーの不足分を補う

 国内で生産した再エネの利用をある程度拡大しつつ、それでも十分なエネルギーを確保できない場合、主たる電源を海外から輸入した水素を用いた火力発電にするという選択肢もある。

 水素は、オーストラリアなど、再生可能エネルギーに富み、安定的な外交関係を長く維持できる国から輸入することになる。ただし、「海外現地で再生可能エネルギーから水素をつくり、それを液化して運搬し、また発電に用いる」という水素バリューチェーンを構築する必要がある。難度は高く、コスト低減努力も必要だが、多くのプレーヤーがこの事業のポテンシャルに賭けようとしている。国の適切な支援などがあれば、実現し得るオプションと考えられる。

痛みが小さいオプションは技術ハードルが高い

オプションc
CCS大量導入により、LNG火力を継続させる

 CCS(二酸化炭素貯留技術)の実用化、つまり技術革新によるコスト低減に加え、国内外におけるCO2貯留キャパシティーの確保が進めば、オプションa、bのような大規模な構造転換にチャレンジせずに、LNG火力を継続していける可能性がある。既存のガス火力にCCS設備を追加すれば、カーボンニュートラル化が実現するからだ。これは、痛みの小さいオプションではあるが、実現に向けては、技術面を中心にハードルも高い。

オプションd
DACを大量導入し、LNG火力を継続させる

 オプションcと似て非なるのが、DAC(空気中からCO2を捕集・分離する直接空気回収)を活用するオプションである。DACの場合、特定の排出源を対象とせずCO2を回収する。発電においてはCO2を出すが、別のところでCO2を回収し、トータルではカーボンニュートラルな電源供給になっている、という考え方である。ただし、実現に向けては、技術面に加え国際的なオフセットのルールなどの環境整備が必要である。こちらも痛みは小さいが、実現に向けてのハードルは高いオプションである。

オプションe
再び原子力に大きく依存する

 原子力発電の再稼働、耐用年数延長、リプレース、新型炉の増設により、原子力中心のエネルギー供給でカーボンニュートラルを実現する道筋も理論的にはオプションとなる。特に、SMR(小型モジュール炉)によるリプレースや増設は、米国や英国でもカーボンニュートラルの一施策として位置づけられている。東日本大震災以降、国内では議論しにくいオプションになっているが、国内の合意形成ができれば選択肢になる。