『BCGカーボンニュートラル実践経営』
『BCGカーボンニュートラル実践経営』
(日経BP)

 二酸化炭素(CO2)が企業を揺さぶっている。カーボンニュートラル(温暖化ガス自室排出ゼロ、炭素中立)に関しては2030年や2050年といった報道がなされるが、「将来に解決すべき問題」ではなく、「今取り組まないといけない問題」である。では、企業は何をどのように考えて取り組めばいいのか、ボストン コンサルティング グループ(BCG、東京・中央)の著者陣が書籍『BCGカーボンニュートラル実践経営』にまとめた。同書ののエッセンスを紹介する連載の最終回は日本が取り得るエネルギー確保のオプションを考察する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)

 日本は、カーボンニュートラル時代に適合したエネルギーを確保できるのだろうか。結論からすると、難度が高いとはいえいくつかのオプションが考えられ、努力次第では解決し得る。オプションの概要は以下の通りである(図表9)。

難度は高いがオプションは6つ

図表9 日本のカーボンニュートラルで取り得るオプション
図表9 日本のカーボンニュートラルで取り得るオプション
(出所:ボストン コンサルティング グループ)
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オプションa
国内再エネ(太陽光・風力)を大量に導入する

 日本における再生可能エネルギーの確保には課題が多い。だが、工夫と技術革新により、ポテンシャルを引き出せる可能性はある。太陽光エネルギーに関しては、徹底的に設置場所を増やしていく努力が出発点になる。「耕作放棄地や農地にできる限り太陽光発電を設置する」「可能な限り多くの建物に太陽光パネルを取り付ける」など、従来の発想や制約を超えた取り組みを、官民を挙げて進めるイメージである。

 また、現在20%程度である太陽光エネルギーの電気への変換効率(単結晶パネルの場合)も、技術的には40%レベルまで高められるという見解もある。このような設置場所の激増と変換効率の向上が実現すれば、太陽光のポテンシャルを大きく引き出し得る。

 これに加え、風力発電の大量導入、具体的には、日本近海の適地に浮体式洋上風力を徹底的に設置していければ、日本のエネルギー需要を充足し得ると考えられている。ただし、そのためには漁業権の問題の解消、より安価かつ大容量の風力発電施設の開発・設置などが必要になる。

 一方で、太陽光、風力を問わず、再生可能エネルギーに共通の弱みは、発電量が自然条件により左右されることだ。よって、これらのエネルギーを主力と位置づけるためには、水素発電などの調整電源を確保するとともに、大幅な系統増強などが実現の条件になってくる。

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