ARプラットフォームの成果が結実

 同社は米Google(グーグル)からスピンオフした企業として知られているが、当初からゲーム開発のために会社を立ち上げたわけではない。外に出て楽しい物を見つけ、他の人と分かち合うなど、現実世界を探索する手伝いをするというのが同社の目指すミッションである。それを実現する上で、「Ingress(イングレス)」などのゲームが大きな効果を発揮したことから、自社でAR技術を活用したゲームを開発するに至った経緯がある。

 それゆえ同社は2018年に、ARゲームで培った技術をプラットフォーム化した「リアルワールド・プラットフォーム」を発表。自社のAR技術の可能性を示すとともに、外部に向けてもプラットフォームを公開して技術を提供しようという動きを見せつつあった。

ナイアンティックは2018年に自社のAR技術をプラットフォーム化した「リアルワールド・プラットフォーム」を発表、それを活用して複数人で空間を共有して対戦ができる「Project NEON」などを披露していた。画像は2018年10月17日の「INNOVATION TOKYO 2018」より(筆者撮影)
ナイアンティックは2018年に自社のAR技術をプラットフォーム化した「リアルワールド・プラットフォーム」を発表、それを活用して複数人で空間を共有して対戦ができる「Project NEON」などを披露していた。画像は2018年10月17日の「INNOVATION TOKYO 2018」より(筆者撮影)
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 Niantic Lightship Platformはその発展形であり、プラットフォームとしての成熟が進み、外部に技術を公開しサポートできる体制が整ったことで、今回のLightship ARDKの公開に至ったといえるだろう。

 なおLightship ARDKの公開に当たってはいくつかの企業とパートナーシップを結んでおり、その中にはソフトバンクや集英社、LIFULL(ライフル)といった日本の企業の名前もいくつか挙げられている。

 ソフトバンクは、5G時代のコンテンツを提供する同社のサービス「5G LAB」に含まれるサービスの1つで、ARコンテンツが楽しめる「AR SQUARE」において、今後Lightship ARDKを活用したコンテンツを提供していくとのこと。ライフルは物件内覧ができるVRアプリ「空飛ぶホームズくん」のアセットを生かし、Lightship ARDKを活用したARアプリの開発を目指すとしている。

 また集英社は漫画雑誌などで多くのIP(知的財産)を持つことから、それらを生かしたXRコンテンツを開発・提供するべく「集英社XR」という事業を開始。その取り組みの一環としてLightship ARDKとのパートナーシップ締結に至ったとしており、今後集英社のIPとARを活用した様々な取り組みを進めていくとしている。

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